新しい生活様式としての手当てとしてケア

治療や予防の世界で“手当て”という言葉が使われます。“手当て”は、あらかじめ準備をしておくことで、働いた仕事に対する支払いは用意をしておいて支払うものであるので、そこから手当という言葉となりました。特別定額給付金なども手当ということになります。治療などの場合には、まさに手を当てて改善を図るようにするものですが、今どきの医療で批判されることがあるのは手で触れないどころか目も合わせない、目を向けるのはモニター画面とカルテだけという医者までいます。
治療の手当ては痛みがあるところに触れて、状態を確認して、状態に合わせて手を施すわけで、東洋医学では指圧が相当します。あん摩マッサージ指圧師、鍼師、灸師、柔道整復師は医療ではなく、医療類似業務となるのですが、鍼や灸であっても治療行為の前後には手で触れて確認をするので、まさに手当てとなります。
医学的な治療によって治すものはキュア(cure)、医療以外の全人的なアプローチで対応するものはケア(care)と分類されています。キュアでは完全な治癒が望めない疾患であっても、ケアによって痛みや異常な状態からの回復、症状の軽減、再発の予防などが達成られることになります。キュアが成功するかどうかは、ケアにかかっていることもあり、その意味ではケアによる手当ては重要なものとなります。
ケアに限らず、相手のことを慮(おもんばか)って行うサービスは、手で触れることが重要で、特に医療や介護の現場では心がこもったケアというのは手で触れることとイコールと考えられています。それなのに新型コロナウイルスの感染によって、マスク、フェイスガード、手袋が当たり前になり、今後の感染防止を考えると、直接的なケアをするときには3点セットは絶対に必要です。
料理をするときに素手でするのか、手袋をするのかということはあっても、指先の感覚が重要な職種では手袋をしてというわけにはいきません。おにぎりを手袋をして握られることまでは許容範囲であっても、寿司を手袋をつけて目の前に握られるというのは違和感がありすぎます。その違和感があるのに、ツボ療法などの指先で触れるものが感染予防のために手袋で触れるようでは、実際には不可能な行為となります。だからこそ、それ以外の安全対策は、すべて行わなければならないのがケアの世界だということになります。