日本人の腸が長い特徴は有利なのか不利なのか

「日本人は腸が長い」ということは今では常識として語られています。腸が納まっている胴体の長さを欧米人と比べると、身体のサイズが小さな日本人のほうが短くなっています。臓器の大きさは身体の大きさに比例する傾向があり、日本人の腸は短くてもよいはずです。ところが、日本人は小さな胴体の中に、欧米人よりも1.5~2mも長い腸が納まっています。
日本人の腸の長さは全体で7.5~8.5mあり、そのうち小腸が6~7m、大腸が1.5mとなっています。日本人は歴史的に低エネルギーの食事をしてきたことが、その理由としてあげられています。
低エネルギーの食事だった時代には腸の長さは利点だったものの、今のようにエネルギー量が高い肉食が増え、多くの量を食べられるようになった時代には欠点となっています。腸が長いということは腸壁の面積も広くなっているので、吸収力もよくなっています。小腸は、十二指腸、空腸、回腸から構成され、栄養素の一部を消化するとともに90%以上の栄養素を吸収する働きがあります。胃で消化された食塊が通過する腸管内腔側には輪状ひだがあり、絨毛の構造になっています。
絨毛の管腔側の細胞は粘膜上皮細胞といい、ここには細胞膜が細い毛のように伸びた突起の微絨毛があります。こういった構造によって、同じ太さ、長さの管と比較すると、その表面積は輪状ひだで約3倍、絨毛で約30倍、微絨毛で約600倍にもなっています。このように複合的にひだ状になっていることで食塊と接触する面積を広くして、効率的に吸収できる仕組みになっています。
小腸の表面が平らな管状だったとすると内部の表面積は約0.4㎡でしかないのですが、絨毛構造の小腸の表面積は約200㎡と、テニスコート1面(約195㎡)と同じくらいの面積になっています。このような仕組みのため、低エネルギーの食事だった時代には、少しでも多くのエネルギー源を取り込むことができたものの、腸壁の面積が広いことでエネルギー源の糖質や脂質を取り込むことができるようになるため、食べた量に比べて血液中に入ってくる糖質や脂質の量は多くなります。
さらに、日本人は低エネルギーの食事から多くのエネルギー源を取り込めるように、分解や吸収に関わる酵素の働きを強めて、吸収率も高めてきました。面積が広く、さらに吸収率が高ければ、同じだけの肉食をしても血液中の脂肪も増え、脂肪細胞に取り込まれる脂肪も増えるようになるということです。