楽しくなければ運動療法は続かない

健康のために食事の量を減らすか、運動の量を増やすかの選択を迫られたとき、どちらか取り組みやすいほうを選ぶ人が多いのかと思ったら、最も多かったのは“できれば”どちらもしたくないという返答があって驚いたことがあります。
選択を迫られたといっても、何を目的にしているかによって意気込みは大きく違い、少し太ってきたからやせたいということなら、食事の量を少し減らすとか、甘いものを減らす、太りやすいとされる脂肪が多く含まれる食品を減らすといった程度のことをするはずです。これに対して糖尿病で本人は厳しい食事制限をしていると思っているなら、これ以上の食事制限は無理と思い、運動を選択するかもしれません。
これが生活習慣病対策となると、どちらか一方で対応するとなると厳しくて実現不可能、やれたとしても長続きしないということになりかねないので、私たちは食事と運動の両方でのアプローチをすすめています。
メディカルダイエットの手法では、食事と運動のタイミングによって食事量を減らさず、運動量を増やさずに体脂肪を減らすことも逆に増やすこともできることから、それぞれの人に合った方法、続けられる方法を指導させてもらっています。
個人の状態を知って、最も効果のある方法を指導するのは、そんなに難しいことではありません。問題は、それが続けられるかどうかで、苦しくはない方法ではなく、楽しく続けたくなるような方法でなければ、せっかく頑張ったのに、無理をしたために無駄になったということにもなりかねません。
“無理なく無駄なく”がモットーの活動をしている私たちとしては、特に続けにくい運動習慣については、楽しくて、自分から続けさせてほしいと言ってくるようなものを提供しています。それは運動の種類だけではなく、やり方も大事で、さらに個人に合ったプログラムを提供できなければ、楽しさを伝えただけで終わります。楽しくない運動なら、やめても悔いはないのかもしれませんが、楽しさを知ったのに、それが続けられなかったとなると、これは精神的な苦痛を与えることにもなりかねません。
個人に合ったプログラムは当然、続けやすいと同時に、効果のある方法でなければなりません。効果が実感できなければモチベーションも高まりません。モチベーションを高めることとして誉めるという精神的な方法があり、目標を達成したら表彰する方法もあるものの、いくら誉められても言葉だけ、励ましだけでは、やる気も長続きしません。そこで今すすめられるのがポイント制によるベネフィットです。ベネフィットは「幸福につながる利益」のことを指していますが、幸福の感じ方には個人差があって、運動をして健康になることだけで幸せという人がいれば、金銭的もしくは金銭に還元できる利益でなければ幸せと感じない人もいます。
金銭的な利益のほうがやる気が起こったとしても、運動そのものが辛ければ“目の前に人参をぶら下げた”状態であっても長続きません。楽しいことは、その運動が楽しいスポーツなどであることも大切ですが、一人で黙々と続けなければならないことは、これも長続きしません。一緒に楽しむ仲間がいて、運動を通じて身につけた知識やノウハウを次の世代に伝え、教えてあげた人から敬われ、先生と呼ばれることも楽しく続けられる要因です。
そういった楽しく続く運動習慣の提供も私たちの役割の一つです。