治検9 太っているだけで動脈硬化のリスク

太っていても、今が健康であれば特に問題はない、とされた時代もありました。

ところが、日本内科学会、日本肥満学会、日本動脈硬化学会、日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本循環器学会、日本腎臓学会、日本血栓止血学会が共同して呼びかけたメタボリックシンドロームによって、世の中の見方が大きく変化しました。

それは2008年のことで、これを受けて厚生労働省による特定健診・特定保健指導が始まりました。これは40歳以上74歳未満のすべての被保険者・被扶養者を対象に、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)予防を目的としたもので、結果に基づいて必要に応じて保健指導が行われます。

従来の健康診断は生活習慣病の早期発見・早期治療を重視してきましたが、内臓脂肪の蓄積によってインスリンの働きが低下するインスリン抵抗性が起こり、糖代謝異常、脂質代謝異常、高血圧などの動脈硬化の危険因子が高まるようになります。

内臓脂肪が蓄積されると、脂肪細胞から生理活性物質のアディポサイトカインは異常に分泌されます。アディポ(adipo)は脂肪、サイトカイン(cytokine)は生理活性物質を意味します。アディポサイトカインによって血圧の上昇やインスリン抵抗性を引き起こすため、動脈硬化のリスクが高まっていくのです。

メタボリックシンドローム(metabolic syndrome)は日本では内臓脂肪症候群と訳されているのですが、メタボリックは代謝を意味するメタボリズム(metabolism)が由来で、代謝低下症候群を正式な訳として使われることもあります。

メタボリックシンドロームの診断基準ですが、腹囲(へその高さでのウエスト周囲径)が男性では85cm以上、女性では90cm以上であることが第一条件です。これに加えて、血糖値、血圧、中性脂肪値、HDLコレステロール値のうち2項目以上が該当する場合に診断されます。

また、喫煙している場合には、鉱脈硬化のリスクが大きく跳ね上がることから、喫煙の1項目が該当することでも診断されます。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕