“煮詰まる”の意味を間違えずに煮詰めてほしい

新しいお茶飲料のテレビコマーシャルで、著名なタレントが「煮詰まったときには」といって、その飲料を差し出すというシーンが流れていました。これに問題があるわけではなくて、飲料が必要とされる場面として会議で結論が出ないことに頭を悩ませているシーンが出てきて、“煮詰まる”という用語が使われたことが引っかかりました。

煮詰まるというのは、本来は議論が充分になされて解決に近づいていることを指しています。辞書の解説でも、そのように書かれています。ところが、今は議論をしても結論が出なくて行き詰まったという意味で使われることが増えてきて、テレビコマーシャルも、そういった意味で使っていたわけです。

煮詰まるは料理の世界から広まった用語で、充分に煮えてきて水分がなくなった状態を指しています。あとは仕上げの味付けを待つだけ、鍋から取り出して盛り付けをするだけという段階を指しています。

最後の仕上げに取り掛かかろうかというのが煮詰まった段階であるのに、間違った解釈だと最終段階にも関わらず、途中でやめてしまう、失敗したと思って放棄してしまうという困ったことになってしまいます。

文化庁の調査では、“煮詰まる”の正しい使い方と誤用では、正しい使い方をする人のほうが多くはあったものの、圧倒的な差ではなくて、年齢が下がっていくほど誤用が多くなっています。若者にアピールする商品は、むしろ誤用の表現のほうが通じやすいということです。

議論は本当に煮詰まったのか(誤用のほう)、それとも結論に達する一歩前なのか、それを判断するのはリーダーの役割です。冷静に判断しなければいけない立場の人が、一緒に煮詰まってしまったのでは、正しい煮詰まりにできないことにもなります。間違った意味の煮詰まりにならないためには、そこが重要だということを講習などで伝えています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕