発達支援推進36 発達障害がある保護者の経験

発達障害児の支援に、発達障害児と多くの時間を過ごしてきた保護者の経験は非常に役立つもので、子どもを育て上げた保護者が、今まさに奮闘している保護者のアドバイザー役としてはもってこいの存在といえます。

そのように考えられる一方で、発達障害児が抱えている本当の気持ちは発達障害を経験したことがないと充分に理解ができないという考えもあります。発達障害児は、自分の状態を把握しきれていないところがあり、それを克服した経験を次に続く発達障害児に役立てるというのは、他の経験に比べたら難しいところがあります。

発達障害の状態も、その心身のプレッシャーも千差万別で、あまりに違いがあることから、ピッタリと重なる経験というのは、なかなか見つけにくいところがあります。

成長して大人になり、発達障害について理解をして、どのように対処されればよかったのかと自分のこととして考えられるようになった人、それも親として子育てをした、もしくは子育てをしている親世代は、発達障害児本人と、その保護者を支える人材としてふさわしいと考えられます。

ただ、千差万別の発達障害は、その対応も数多くの方法があり、実際に改善があったことであっても、それが当てはまる対象は少ないことがあります。それにも関わらず、成功体験を他の人にも当てはめようとする人が少なからずいます。

発達障害で“こだわりが強い”というと、自閉症スペクトラム障害に見られる状態と考えられがちですが、注意欠陥・多動性障害でも、こだわりがみられます。一つのことに集中するのではなく、多くのことに気が引かれるので、こだわりがないように思われがちです。しかし、独特のこだわりが多くのものに目を向けさせるというこだわりもあるのです。

自身が発達障害であった保護者の経験を活かすためには、発達障害の多様性について知識として学び、こだわりなく対応できるようにすることが大切と考えます。そのための学びの場も、発達障害の支援を進めるためには必要となってくるのですが、まだまだ学びの機会も少ないのが現状です。
〔発達支援推進協議会 小林正人〕