発達支援推進37 食事面での“困った”子どもは“困っている”子ども

発達障害児の生活面での困難さは複数あり、その中でも栄養摂取は困難さを解決するための重要なテーマの一つとなっています。発達障害は神経伝達物質のセロトニンが不足していることから自律神経の副交感神経の働きが弱く、交感神経が強く働くようになることから興奮状態になりやすく、心身の疲労も強くなります。

これを解決するためには、セロトニンの材料となる必須アミノ酸や、体内のエネルギーを作り出すために必要な多くの栄養素の摂取が求められるのですが、極端な偏食という困難さがあります。極端な偏食のために必要な栄養素が不足する、そのために発達障害の特性が強く現れるようになり、さらに栄養素が不足するという困った循環が起こるようになります。

この場合の“困った”というのは食事面で子どもを支える保護者や学校給食などの専門家の感覚であって、食べてほしいものを食べてくれないので食事の対応が大変だということを示す言葉です。

発達障害があると、食べたくても食べられないことがあり、何も好き嫌いで食べないと言っているわけではありません。他の友達が食べているのに食べられないことは本人にとっても辛くて苦しいことです。食べられないことに“困っている”子どもだということを認識することが、まずは大切です。

「食べにくくても、少しずつ食べているうちに慣れてくる」というのは成長過程で見られることではあるものの、発達障害児は、ただ味覚、嗅覚、視覚、聴覚、触覚の五感だけが理由で食べられないわけではありません。

極端な偏食を改善するための方法として、よく示させるのは「牛乳はスポイト1滴からでもよいので与える」「味も見た目などもわからないように調理して提供する」ということです。いまだに発達障害児の栄養相談で専門家が口にすることです。

しかし、感覚が過敏な発達障害児は、本人が嫌がっていることを少量であってもやった、こっそりと隠して食べさせようとした人のことを嫌いになって、その人が作ったもの、提供したものが食べられなくなるということが当たり前のように起こります。

発達障害は、その特性が生涯にわたって続くということを考えると、簡単に食べられないものでも与えればよいという考えから脱却しないと、それこそ生涯にわたっての健康を左右する結果にもなりかねないのです。
〔発達支援推進協議会 小林正人〕