発達栄養学25 多く噛むよりも多く噛める食品を選択

しっかりと噛んでから飲み込む咀嚼(そしゃく)は、子どもにも大人にも高齢者にも大切なことです。三世代が一緒に生活をしている環境であれば、子どもが好きな食品を他の世代が食べることもあり、高齢者が他の世代が好む食品を食べる機会もあります。これは多くの食品から多彩な栄養素を摂取するという結果にもつながります。また、よく噛むことは歯から受けた刺激が脳を刺激して、脳の成長や認知能力の維持にも役立つことです。
子どものときには、あまり硬いものを食べることができず、高齢者も歯や顎の力の低下から、やはり硬いものが食べられない状態です。そんな状態の人に、よく噛むことをすすめて、一口につき20回も30回も噛むようにすると、軟らかい食べ物であったら食べ物の形がなくなってしまうことになります。本来なら咀嚼をすすめるときには、よく噛むことではなくて、よく噛める食品を食卓に乗せることを考えるべきです。
よく噛める食品というのは食物繊維の不溶性食物繊維が多く含まれるもので、その多くは野菜、中でも根菜類やイモ類などがあげられます。食物繊維は不溶性食物繊維と水溶性食物繊維に大きく分けることができますが、不溶性食物繊維は野菜などに多く含まれ、水溶性食物繊維は海藻、きのこ、果物などに多く含まれていると認識されています。中には、両方の食物繊維が多く含まれているものもありますが、食物繊維の種類によって、腸内環境にも好結果が現れます。
発達障害の人は偏食が多くみられ、多くの種類の食品を食べ慣れていない子どもの場合には極端な偏食もみられます。不溶性食物繊維には腸壁を刺激して蠕動運動を促す働きがあるのですが、その一方で便を硬くするというデメリットがあります。それに対して水溶性食物繊維は便を軟らかくする作用があり、この両方の食物繊維を摂ることによって排泄されやすい状態を保つことができるようになります。
よく噛める食品と同時に、あまり噛まなくてもよい食品も、食物繊維の特徴を知って食卓に乗せるようにしたいものです。