腸と腸内フローラの関係性

腸内細菌の善玉菌と悪玉菌のバランスが取れていると、腸内の善玉菌が増え、腸壁に善玉菌が集まって均等に並び、その周りに悪玉菌や日和見菌が集まり、内視鏡で観察すると、異なった種類の花が群生して花畑を作っているように見えます。花畑は英語ではフローラ(flora)といいますが、このように腸内細菌によって作られた生態系は腸内細菌叢(そう)と呼ばれ、腸内フローラとも呼ばれています。
腸内フローラが形成されているのは小腸の60%ほどを占めている回腸と大腸で、腸内細菌は回腸から先を主な活動場所としています。胃、十二指腸、空腸は、強酸性の胃液の影響を受けて酸性度が高く、耐酸性のあるラクトバチルスが棲みつき、腸内フローラの中に大きく群生しています。ラクトバチルスはチーズや乳製品を発酵させる菌としても使われています。回腸と大腸にはバクテロイドス、プレボテラ、ルミノコッカス、ビフィズス菌などの嫌気性の菌が棲みついています。
腸内フローラを構成する菌は種類によって3つにタイプ分けされています。1型はバクテロイドスが多いタイプで、欧米人や中国人に多く見られ、低炭水化物、高たんぱく質の食事を摂る民族に多くなっています。2型はプレボテラが多いタイプで、アジア人、中南米人、アフリカ人に多く見られ、高食物繊維の食事を摂る民族に多くなっています。そして、3型はルミノコッカスが多いタイプで、日本人やスウェーデン人に多く見られ、動物性たんぱく質と脂肪が多い食事を摂る民族に多くみられます。
3型は一般には肉食が多い欧米人がイメージされます。日本人のイメージとは一致していないのですが、それは過去の日本人の食事内容であり、現在の食事は洋風化が進み、3型に近づいています。日本人は、低栄養の食事の歴史が長かったことから腸が長くなり、吸収に必要な酵素の働きも高くなってきたために、過去の食事で不足しがちな動物性たんぱく質と脂肪が吸収されやすくなっています。つまり、これらが含まれる食品を多く食べたのと同じ状態になり、それが3型のルミノコッカスを増やす結果となったと考えられているのです。