発達栄養学69 睡眠ホルモンを増やして熟睡する

熟睡することは成長ホルモンの分泌量を促進して、筋肉や骨を増やして成長させるとともに、脳を含めた全身の疲労を回復させる効果もあります。熟睡しているときには、自律神経の副交感神経の働きが盛んになっています。興奮をしている状態のときには、交感神経の働きが盛んになっていて、リラックス作用がある副交感神経が働きにくくなっていることから、寝つきが悪くなり、熟睡もしにくくなります。そのために睡眠時間は足りているはずなのに、疲れが取れない、朝になっても脳と身体が思ったように働いてくれないということも起こるようになります。
熟睡のためには、就寝時間の前に興奮を誘うブルーライトの光のスマホやパソコン、LEDライトのテレビ画面を見る時間を極力減らすことも必要ですが、それと同時に睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンの分泌を促すことが重要になります。メラトニンの分泌には神経物質のセロトニンを安定させることが大切になります。
しかし、ストレスを受けると脳内のセロトニンが低下してきます。セロトニンは必須アミノ酸のトリプトファンから作られるので、トリプトファンが多く含まれる大豆製品、チーズ、肉類、牛乳などを摂るようにします。摂取のタイミングとしては、夕食がよいとされています。
この他にも、熟睡のためには神経バランスを整えて睡眠リズムを整えることも大切になります。睡眠は浅い眠りのレム睡眠と深い眠りのノンレム睡眠を90分周期で繰り返し、4回の周期(6時間)を過ぎたあとに起床するリズムとなっています。ノンレム睡眠のときに成長ホルモンが多く分泌されるのですが、眠りが深くなるほど分泌量が多くなります。1回目の睡眠が深いと、それに続く3回の睡眠も深くなり、成長が促進されます。1回目の睡眠が浅くなっていると残りの3回の睡眠も浅くなって、そのために成長にも悪影響が出て、さらに疲労物質が分解されにくくなり、疲労も残りやすくなります。
睡眠リズムを整えるために役立つのはビタミンB₁₂が含まれている肉類、チーズです。また、ビタミンB₁にも神経を安定させる作用があり、このビタミンは豚肉に特に多く含まれています。これらの食品はトリプトファンが多く含まれる食品と重なっています。もう一つ注目されているのはレタスで、この中に含まれる苦味成分のラクチュコピクリンという特有のポリフェノールには鎮静作用と催眠作用が認められていて、“眠れる野菜”とも呼ばれています。