発達栄養120 咀嚼が味覚に影響する

しっかりと噛んで食べることは、食べたものを細かく砕いて、唾液を多く分泌させて飲み込むための重要な行為で、このことによって消化がよくなります。消化によって食べたものが分解されれば、エネルギー源の糖質がブドウ糖になり、脂質が脂肪酸になり、たんぱく質がアミノ酸になって小腸から吸収されます。

このように咀嚼は栄養摂取には重要な役割をしているのですが、噛んで食べることは“おいしく食べる”という重要な役割もしています。食べ物の味は、食品の味と調理による味、調味料の味だけで決まっているわけではありません。

よく噛むことによって食べ物の味が引き出されます。それは食品が小さく砕かれることによって食品本来の味が出てくるということに加えて、唾液の効果もあります。唾液が多く分泌されることによって糖質(ご飯、パン、麺類)が分解されて、甘みが引き出されていきます。

糖質はブドウ糖が数多く結びついたもので、鎖やネックレスのようになっています。これを唾液が分解して、麦芽糖になります。麦芽糖はブドウ糖が2個つながったものです。麦芽糖が分解されると糖質の最小単位のブドウ糖となります。

通常の咀嚼では、しっかりと噛むといっても麦芽糖になって甘味を感じるようになってから飲み込むことになりますが、最後の最後まで噛み続けると、もっと甘くなっていきます。これがブドウ糖に変化した状態の味です。

料理は、咀嚼によって唾液と混ざり合って、味が変化していくことを考えて、味付けがされています。それなのに、あまり噛まずに食べるということは、料理の本来の味を知らずに食べていることになります。

味覚を鍛えることは、いろいろなものを食べて、多くの栄養素を摂取するためにも重要なことで、それも考えて、よく噛んで食べる習慣を身につけられるようにするのは、親や周囲の人の役割といえます。