真っ平らで続くウォーキングコースの魅力

ウォーキングのイベントは歩きやすく、安全なコース設定が重要で、主催する自治体としては観光案内になることも期待していますが、大会を主管する団体としては安全第一で、平らで、見通しがよく、歩道があるか歩道がない場合でも広くてクルマとの接触を考えないでよいコースの設定を重視しています。そのために主催者と主管で意見を戦わせる場面も出てくることもあります。
全国のウォーキングコースを見てきて、これは羨ましいと思えるコースが数多くありますが、その中でも安全ということでは岡山県の岡山市と倉敷市にまたがる広域の平らな地域は見事なコースといえます。道は真っ直ぐなコースだけが歩きやすいわけではなくて、曲がることも楽しみにはなるものの、曲がったために迷うようなことがあってはいけません。もしも迷ったとしても、すぐに本線に復帰できるコースということで、よく例にあげられるのは京都の碁盤の目の道路です。
といっても京都の碁盤の目をウォーキングコースにしようとすると、交通量や歩行者、歩道に面した商店などの関係で、ウォーキングコースにはしにくいところもあります。マラソンや駅伝では道路を封鎖して、専用コースにすることができますが、これを毎日実施することはできません。ウォーキングは大会だけでなく、日々自主的に歩くこともされているわけで、コース選びは苦労します。中には、他のイベントを実施しているエリアではウォーキング大会など多くの参加者が歩くことは許可されない場合もあります。
話は岡山に戻って、どうして真っ平らな地域になっているのかというと、ここが昔は“吉備の穴海”と呼ばれる瀬戸内海が内側まで入り組んだところだったからです。その範囲は岡山市と倉敷市のほとんどが入ってしまう広さで、東西50km、南北20km、その面積は琵琶湖と同じくくらいです。江戸時代に埋め立てを行い、広大な土地を得たのですが、その埋め立てを可能とした岡山三大河川の吉井川、旭川、高梁川は、すべてが穴海に注ぎ込んでいました。埋め立てによって島であった児島も陸地の一部となり、今でも地名に島がつく地域が点在しているのも元々が島であった名残です。
この真っ平らな土地を離れると、大昔に海岸線だったところから小さな山が続く旧来の吉備地域(備前、備中)へと続き、ここも歩くのに適した地域です。こんなにも歩きやすい環境があるのに、岡山県は、都道府県の中で歩数の差が男女で最も大きくなっていて(1日に2000歩以上の差)、女性が歩かない地域ともなっています。それなのに女性の平均寿命は全国第2位で、1位とは僅差です。1mm以上の雨が最も少ない晴れの国でもあるので、もっと歩いて日本一の健康な地域にもなれる環境が整っているのです。