歩く姿を子どもの見本とするために

歩く姿をほめられたのは“初めて立って歩いたとき”という人も少なくありません。「歩く姿が美しいですね」とほめられることは、あまりないはずです。スポーツをしていて、その競技の姿勢もよくて、素晴らしいポーズで走っている人でも、なぜか歩く姿をほめられないということもあります。
ウォーキングの指導を受けていれば、正しい歩行姿勢が身についていそうですが、“本当に指導されたのか”と疑問を抱くような歩き方をしている人がいます。スポーツ競技とは違って、歩くのは一般には誰でもできることで、特別に指導を受けていなくても歩くことはできます。歩き方を教える資格がないと教えられないというわけではないので、それぞれが独自に指導することができます。だから、我流の歩き方、これが正しい歩き方だと信じた歩行姿勢を押しつけるようなことも起こってしまいます。
日本ウオーキング協会では、公認ウオーキング指導員や健康ウオーキング指導士のほかに歩育コーチという子どもの発育を目的とした資格認定を行っています。その中では、健康的に長く歩き続けられる歩行姿勢が指導されています。
その歩行姿勢として絶対にやってはいけないのは、膝の関節などの健康食品のコマーシャルに出てくる肘を曲げて、上に振り上げるような姿勢での歩行です。肘を曲げて勢いよく振るのは、いかにも元気に歩いている印象がありそうですが、これでは歩幅を広げて勢いよく前進することもできず、できたとしても長く続けることはできません。
肘を曲げると腕の振り幅が小さくなり、これは早く腕を振って、走るときには有効な姿勢です。しかし、歩くときには肘を伸ばすようにして振り幅を大きくすることで歩幅が広がり、かかとから着地して、足裏を徐々に地面に密着させて、足先で蹴り出して前進するという歩き方ができるようになります。基本的なテクニックとしては、これだけです。あとはできるだけ遠くを見て、前屈みになりすぎないようにすることと、身体の動きを効率的に前進させるエネルギーとする方法くらいです。
昔から親の背中を見て育つというようなことが言われますが、子どもの見本になるような歩き方をして、その意味を教えてあげることで、さらに次の世代に伝わっていくということです。だから、当たり前のことをわざわざ教えていると言われようとも、ウォーキングの姿勢の指導を健康づくりの基本として掲げているのです。