糖尿病は本当に体質が関係しているのか

日本人の体質の研究を始めたきっかけは、糖尿病も高血圧も遺伝によって伝えられた体質に関係しているということを学生時代に聞いたことでした。そのときには、まだ医学関係者との付き合いはなくて、法学、社会学、インド哲学を並行して学んでいたときであるので、身体の知識といえば、両親から聞いて学んでいた健康関連の知識と教科書レベルの知識だけでした。健康オタクと言ったら叱られそうですが、両親は健康雑誌がまだない時代から、健康雑誌のテーマとなるような情報を知っていて、それが家族の会話にもなっていました。
そんな会話にも体質はよく出てきました。体質という言葉は便利なもので、よくメカニズムがわからないことは体質で済ませることがあります。日本人に高血圧が多いのも、がんの中でも胃がんが多いのも、糖尿病患者が一気に増えたのも、そして、平均寿命が終戦後は先進国で最下位だったのが一気に世界のトップクラスまで驚異的の延びを示したのも、すべて体質で済ませてしまうことがあります。
糖尿病は終戦後には調査をしようにも患者を探し出すのが大変だったのが、今では糖尿病患者、その予備群は、ともに1000万人を超えていて、“石を投げれば糖尿病患者に当たる”というくらいの状態になっています。調査対象は成人人口の約1億人なので、国民の5人に1人が糖尿病か予備群という確率にまで増えています。
糖尿病と高血圧が遺伝で伝わる体質であるなら、父方は糖尿病家系、母方は高血圧家系で、私は両方が出てもおかしくなかったのですが、これは本人の“努力”で避けることができました。こんなことを冗談交じりで話をするのは、糖尿病も高血圧も体質が関係しているとしても食生活と運動習慣で予防することができるからです。
臨床栄養の世界にいてわかったことは、糖尿病は、その体質を持った人が、過食によって膵臓に大きな負担がかかることによって、血糖値を降下させるホルモンのインスリンの分泌が低下することで発症するということです。それなら暴飲暴食をしても糖尿病の体質でなければ大丈夫ではないかと考えられるところですが、残念ながら日本人は、その体質の人が極めて多くて、食べ過ぎ、運動不足で発症してしまう人も極めて多いのです。ということで、体質ではありながらも、生活習慣に影響される、まさに生活習慣病そのものだったのです。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)