自律神経とストレスの関係

自律神経の調整がスムーズに運ばれていれば、状況に合わせて交感神経と副交感神経が切り替わっていくのですが、多くの人は交感神経が優位に働きすぎて、副交感神経が劣位になっています。その一番の理由としてストレスがあげられています。
ストレスは心身にかかる負担のことと一般には言われていますが、実際にはストレスの原因になるストレッサーに対する身体の反応を指しています。精神的なストレスと身体的なストレスに分けられますが、精神的なストレスは自律神経に影響を与えて、血管の収縮、心拍数の増加、血圧の上昇、血糖値の上昇、呼吸数の増加などの反応を起こします。こういった反応は自律神経の交感神経の働きが盛んになったときに起こることで、交感神経が優位になっていることによって胃や腸の動きにも影響が現れるようになります。
身体的なストレスの要因としては、仕事による身体的な負担だけでなく、激しい運動、肥満、喫煙や飲酒もあげられます。ストレス解消のために女性が甘いものに走るのに対して、男性ではお酒を求める人が多くなっています。飲酒をすると、脳が一時的に麻痺することから、嫌なことを忘れる効果はあります。しかし、精神的ストレスの場合には飲酒をしたからといって原因が解消されるわけではないので、飲酒が身体に与える影響とストレスの影響を重ねて受けることになります。
飲酒をすると寝つきやすくなるものの、睡眠は浅くなり、睡眠時間の割には疲労が残り、身体的なストレスが高まる結果となりかねません。
ストレス解消を喫煙の理由にする人がいますが、タバコを吸うとイライラ感が弱まる、集中力が高まると感じているのは、喫煙本数が多く、喫煙期間が長い人に多くみられます。しかし、喫煙者がイライラを強く感じるのは中毒症状であり、喫煙によって低下している集中力が普通の状態に戻っただけであり、喫煙のプラス効果にも疑問が抱かれています。
タバコを吸うと、飲酒と同様に、生活習慣病のリスクが高まります。タバコの煙に含まれるニコチンは自律神経系の交感神経を刺激して副腎からノルアドレナリンやアドレナリンなどのカテコールアミンを分泌させます。カテコールアミンには心拍数と血圧を上昇させるだけでなく、冠動脈を収縮させる作用があります。喫煙によって、タバコを吸っているときだけでなく、吸っていないときにも酸素が不足するため、酸素を早く全身に送り届けるために交感神経の働きが盛んになって血圧が上昇します。
喫煙をするとインスリン感受性が低下して、血液中のブドウ糖が処理しきれなくなり、高インスリン血症となります。そのために膵臓が疲弊してインスリン分泌量が減り、血糖値が上昇していきます。タバコがインスリン感受性を低下させると、血液中のインスリンが増えてエネルギーを蓄えるようになり、その結果、中性脂肪が増えていきます。また、喫煙は善玉コレステロールとも呼ばれるHDLコレステロールを減らし、LDLコレステロールを増やすリスクの一つであり、これらは中性脂肪値の増加とともに動脈硬化を進める要因になっています。