発達栄養学29 カルシウムが大きく不足している(国民健康・栄養調査結果)

カルシウムというと骨のためのミネラルという印象がありますが、実際には血液凝固、筋肉収縮、神経系の調整のほか細胞内外のカルシウム濃度の調整によって細胞の機能の調整、ナトリウム排泄によって血圧調整をする作用があります。また、腸壁を刺激して蠕動運動を盛んにして便通を促進する作用があり、カルシウムの摂取が大きく減少すると脂肪酸合成酵素が活性化し、肝臓で合成される中性脂肪が増加します。(詳しくは発達障害9で紹介)
カルシウムの吸収率は約30%で、体内では1日に180mgが必要であることから、1日の摂取量は600mg以上となっています。「日本人の食事摂取基準」(2020年版)では、成長期の男児では800〜850mg、女児では700〜800mgとなっています。
実際に、どれくらいの量が摂取されているかについては、厚生労働省の「国民健康・栄養調査」で調査されています。平成10年(1998年)までは男女平均での摂取量が発表されていましたが、平成11年(1999年)から男女別に発表されました。初めて男女別のカルシウム摂取量が発表されたときに、摂取基準と比較して摂取量が10〜15%も不足していたことが驚きをもって報道されていました。そして、カルシウム摂取の重要性が広く訴えかけられましたが、カルシウム摂取量は年々減少傾向が見られました。
令和元年(2019年)の調査では男児の1〜6歳は600mgの摂取基準に対して446mg(約74%)、7〜14歳は850mgに対して676mg(約80%)、15〜19歳は800mgに対して504mg(約63%)でした。女児では1〜6歳は550mgに対して391mg(約71%)、7〜14歳は700mgに対して594mg(約85%)、15〜19歳は800mgに対して404mg(約57%)と大きく不足していることがわかります。
あくまで調査対象者の平均値ですが、身体の成長にも神経伝達などにも重要な働きをしているカルシウムが不足していることを意識して、積極的に摂取するべきだということです。