自閉症スペクトラム障害が道具を使うのが苦手な理由

発達障害の自閉症スペクトラム障害の人は、道具を使った運動や作業が苦手であるのは、道具を身体の一部のように感じられない可能性があることを、国立障害者リハビリテーション研究所と静岡大学の研究グループが研究成果をまとめて、世界発表しました。
研究グループによると、コミュニケーションに困難を抱える自閉症スペクトラム障害の人には球技や書道、工作などが苦手な傾向が見られ、周囲の理解を得られずに孤立することがあり、一人ひとりの障害特性に応じた支援や訓練につなげることを目的に研究が始められました。
手にした道具の上で起きる錯覚現象について自閉症スペクトラム障害の人と、発達障害がない人と、それぞれ13人で比較されました。その方法ですが、長さが約10cmの細いアルミニウム製の棒を左手と右手の人差し指の上に置いて、目の見えない状態で最初に左手の指の上を0.8秒間隔で連続2回、0.1秒後に右手の指の上を1回叩いて、どのように感じるかが調べられました。
多くの場合は、脳が棒を体の一部として捉えて、ウサギが跳ねるように2回目は棒の真ん中、3回目は右手の少し左側という、叩かれていない場所に刺激を感じる皮膚ウサギ錯覚が生じます。発達障害がない人は13人ともに錯覚を認識したのに対して、自閉症スペクトラム障害の人のうち5人は2回目の棒上の刺激をほとんど感じませんでした。この5人全員が球技などの運動が苦手だったといいます。
自閉症スペクトラム障害の子どもは運動が苦手なことが多く、運動をすることによって運動機能が鍛えられるとして、発達支援として運動指導が行われます。従来の方法がうまくいかないという子どもも当たり前のように存在していますが、今回の研究成果を踏まえて、運動療法の方法を検討することも必要かもしれません。