“身体の重き荷”の有効活用

重い荷物を身につけているというと、体脂肪のこともあれば筋肉のこともあります。体脂肪のほうは臨床栄養の仕事をしていたときに、よく比喩として“重き荷”という表現を使っていました。

その比喩で使われるのは、『人の一生は重き荷を背負いて遠き道を往くが如し』という徳川家康の遺訓の冒頭の言葉で、「重い体脂肪を身につけたまま一生暮らしていくつもりですか」と肥満と呼ばれるほどに太っている人に対して使われていました。

本来なら背負わなくてもよい“重き荷”のために、「行動にも生活にもデメリットがあるような生き方はやめませんか」というような言い方です。メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)が健康維持のためのキーワードとして頻繁に使われていたときには、できるだけ早く体脂肪を減らそうと無理をして、かえって身体を傷めるようなことになるという例も多くありました。

徳川家康の遺訓には続きがあって、「急ぐべからず」、「不自由を常と思えば不足なし」、そして最後は「及ばざるは過ぎたるより勝れり」と続きます。まさに「鳴くまで待とう時鳥(ほととぎす)」と辛抱強く進むことを旨とした偉人が残した言葉です。

体脂肪を減らすために食事量を減らすというのは楽な方法であったとしても、エネルギー代謝の面から考えると非効率な方法で、最もよいのは運動によって余分と思われていた体脂肪をエネルギーに変えて、これを健康的に活動するためのパワーの源に変えていくことです。

これは筋肉量が多いために体重計に乗ると太っているように思われても、実は健康的な人が多い健康スポーツを生涯にわたって続けようとしている人たちのことで、日本健康スポーツ連盟の理事を務めているときに学ばせてもらったことです。

筋肉の“重き荷”をつけるためにも、コツコツと日々の努力を重ねていくことが重要ということで、徳川家康の遺訓を引用させてもらっています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕