食べ方の変化が食べるものを変化させた

次世代の子どもたちに、伝統的な和食の文化を伝えるのは、文化的な面だけでなくて、健康面でも重要なことです。日本人は和食を中心にしてきたものの、第二次世界大戦前は動物性たんぱく質と脂肪の摂取が少なかったことから、血管が丈夫ではなくて、血管が切れる脳血管(脳梗塞、脳出血など)と心疾患(心筋梗塞、狭心症など)が多くなっていました。また、免疫が低くて、結核をはじめとした感染症で亡くなる人も多くいました。
ところが、戦後は徐々に肉食が増えて、動物性たんぱく質と脂肪の摂取量が増えて、血管も丈夫になり、免疫も高まって、それが一気に平均寿命を世界1位に押し上げることにつながりました(今は2位に甘んじていますが)。平均寿命が延び続けても、生活習慣病がそれほど多くはなかった時代はよかったのですが、今では肉食の行き過ぎが血管にダメージを与えて、血流が低下することから免疫も低下してきています。
現状の死因(2019年)は1位が悪性新生物(がん)、2位が心疾患、3位が老衰、4位が脳血管疾患、5位が肺炎となっています。老衰と肺炎が近年上位に上がってきたのは超高齢社会を反映しています。がんも肺炎も免疫低下が関わり、心疾患と脳血管疾患は動脈硬化が要因となっています。
肉食が増えてきたのは、魚よりも肉が安くて、調理に時間がかからないということも関係しているものの、それ以上に大きいのが肉をおいしく感じるように日本人の味覚が変わってきたからで、その原因になっているのは日本人の食べ方の変化です。日本人の食事はご飯を中心にして、おかずを食べて味が濃ければご飯を口に入れ、それで薄かったときには汁物を口に入れるという食べ方をして味覚を鍛えてきました。そのおかげで体調に合わせて食べるときの味わいが変えられるようになり、年齢を重ねていったときに徐々に薄味になるようになっていました。しかし、その食べ方は変化して、欧米人のような順番に食べていくという食べ方になっていることが肉食を減らせず、日本人の健康度に影響を与える結果になってしまったのです。