健康寿命延伸のための提言47 提言のエビデンス7感染症1

国立高度専門医療研究センター6機関(国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター)が連携して、研究成果として「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」を公開しています。提言のエビデンスの解説(第1回)を紹介します。
肝炎ウイルス感染は肝がんの最大のリスク要因です。肝がんの約8割がB型またはC型肝炎ウイルス感染者から発生しています。B型・C型肝炎ウイルスは主に血液、B型肝炎ウイルスは性的接触を介しても感染します。出産時の母子感染、輸血や血液製剤の使用、まだ感染リスクが明らかでなかった時代の医療行為による感染ルートが考えられています。その他、医療従事者は肝炎ウイルスに感染している人の血液が付着した針を誤って刺した場合に感染する恐れがあります。
現在、中高年の人は、輸血や血液製剤の使用に思い当たることがなくても、以前に受けた医療行為によって知らないうちに感染している可能性もあります。そのため、地域の保健所や医療機関で、一度は肝炎ウイルスの検査を受けることが重要です。もし陽性であれば、さらに詳しい検査が必要で、ウイルス駆除や肝臓の炎症を抑える治療、あるいは肝がんの早期発見のためにも、肝臓の専門医を受診することが推奨されています。
C型肝炎ウイルス陽性の場合、2014年9月以降は、従来の治療薬剤の主流であったインターフェロンを使わない、飲み薬だけのインターフェロンフリー治療が始まり、C型肝炎の抗ウイルス治療の主流となっています。これにより、慢性肝炎から代償性肝硬変までの初回治療の場合、95%以上の人でウイルスを体内からなくすことが可能となっています。B型肝炎ウイルスの場合、ウイルス駆除はかなり困難ですが、インターフェロンあるいは抗ウイルス薬を用いることによってウイルス量を減らすことができ、これに伴って肝がん発生リスクが減少することが報告されています。