70歳は免疫の分岐点

70歳という年齢は健康について考えるときのターニングポイントです。男性は平均寿命が80歳を超えましたが、平均寿命まで、あと10年ということになり、この10年間を如何に過ごすかというのが人生の締めくくりを幸せとできるのか、それとも不幸と感じながら最期に向かうのかの大事な分かれ目になります。幸せな10年間のためには、入院することもなく、介護を受けることもなく自由に暮らしたいものですが、実際には健康寿命は男性では平均寿命よりも9年間も短くなっています。女性は12年間ですが、これは平均寿命が長いことと関係しています。
男性を例に話を進めますが、健康寿命と平均寿命の差の9年間は寝たきりまではいかなくても家の近くしか出歩けない、他人の助けがないと好きなことができないという状況になります。そのために、この期間は生活や趣味などのための消費が極端に減り、その分が医療や介護に使われます。その証拠の一つとしてあげられるのが生涯医療費です。生涯医療費は2600万円(男女平均)となっています。これは本人が医療費として医療機関に支払う金額ではなく、医療機関が受け取る金額で、国や自治体などが支払う分も含まれています。その2600万円の半分が70歳以降に使われているのです。平均寿命までの10年間だとすると年間130万円もかかっていることになります。
なぜ、こんなにも医療費がかかるのかというと、免疫の低下が大きく影響しています。免疫は病原菌やがんなどの外敵と闘う力とされています。実際には敵と味方を区別して、敵だけを攻撃する能力を指していますが、免疫が低下するとがんにも細菌にも侵されやすくなります。免疫のピークは20歳代で、これをすぎると年々低下していきます。40歳には免疫は半分になり、70歳になると10分の1にも低下すると考えられています。10分の1になるということは、がんなどになる可能性は10倍になるということになります。
人間の身体には約60兆個の細胞があるとされていますが、1日のうちに新たにできる細胞は約1兆個です。1日に6分の1もの細胞が入れ替わっているわけです。この入れ替わりは、古い細胞が壊れ、新しい細胞が分裂してできています。いわばコピーのようなもので、1兆個もコピーされるとコピーミスも起こります。このコピーミスががん化で、約5000個のがん細胞が毎日できています。1兆と比べると2億分の1の数ですが、がん細胞は一気に増殖する特徴があります。
細胞は誕生から20年かけて60兆個に増えていきます。一気に増殖するときには倍々に分裂して増えていきますが、一定量に達すると分裂するたびに1個の細胞が増える1枚ずつコピーの状態になります。こういった増え方をするように規制がかかっているのですが、がん細胞は規制がかかっていないので、倍々に増えていきます。そのため、がんは一気に増殖をしていくのです。
免疫は免疫細胞と呼ばれる白血球、リンパ球が担っています。この免疫細胞が正常に働いていればよいのですが、免疫細胞も老化していきます。老化といっても細胞なので新たに誕生しています。それなのに老化するのは、細胞を働かせるためのエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)を作り出すために必要な三大ヒトケミカルのα‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10が加齢に伴って減っていくからです。この三大ヒトケミカルの減少の曲線は免疫低下の曲線と似たような形を描いています。そのために、三大ヒトケミカルの減少が免疫を低下させると考えられているわけです。
三大ヒトケミカルは体内で合成される成分ですが、医薬品だけでなく食品として摂ることも許可されているので、サプリメントとして摂取することができます。
α‐リポ酸、L‐カルニチン、コエンザイムQ10については、このサイトの「サプリメント事典」を参照してください。