塩分で血圧が上昇するのは、食塩感受性が影響しています。人間の身体にはナトリウム濃度を一定に保つ仕組みがあり、ナトリウム濃度が高くなると腎臓から排出して、逆にナトリウム濃度が低くなると腎臓でナトリウムが再吸収されます。
食塩感受性がある人はナトリウムの排出の機能が障害を受けやすくなっています。食塩感受性が高いと、塩分を多く摂ることによって腎臓の交感神経の働きが促進されて、ナトリウムの排出が抑制されて、血液中に再吸収されます。ナトリウムは水分と結びつきやすいので、血液の量が増えて血圧が上昇します。
食塩感受性がある人は全人口の30%ほどだとされています。ナトリウムの摂取量に関係がない人は食塩非感受性と呼ばれています。このタイプは食塩では血圧が上昇しないので高血圧の心配がないのかというと、そういうわけではありません。男女別でみると男性のほうが高血圧のリスクが高くて、男性では60%、高齢者では男性は75%が高血圧となっています。
食塩非感受性の人は、強力な血管収縮作用があるアンジオテンシンIIという物質が血管に取り込まれて、血管が収縮することが確認されています。アンジオテンシンIIは腎臓で作り出されて、血液中を流れて、血管壁に取り込まれていきます。
若いときにはナトリウムの摂取が血圧に影響しなかった人でも、年齢を重ねていくと高血圧になりやすい傾向があります。これはアンジオテンシンIIの影響や血管が老化して硬くなることもあるのですが、そもそもナトリウムが血管の細胞に入り込むことが関係しています。細胞に入ったナトリウムは水分と結合するので細胞を膨らませます。そのために血管の内側が狭くなり、血圧が上昇します。
若いときには血管に弾力性があって、血管の細胞が膨らんでも対応できるのですが、年齢を重ねて動脈が硬くなってくると対応しきれなくなって、血圧が上昇するようになります。若いときには塩分摂取で血圧が上がらなかったので食塩非感受性だと安心をするのではなくて、食塩の摂取量は年齢が進むほど減らすべきです。
とはいえ、高齢になると味覚が低下して、塩分がないとおいしさを感じにくくなるので、出汁を多くする、酸味を使う、焦げ味を利用するといった工夫が必要になってくるのです。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕