体内の細胞のミトコンドリアの中で作り出されたエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)の多くは体熱として使われています。平均すると基礎代謝の約70%が体熱になっています。生命維持のために必要な基礎代謝は消費エネルギー量のうち約70%なので、全エネルギー量のうち約50%が体熱になっています。体温を保つことは相当のエネルギーが必要ということです。
ミトコンドリアが多い細胞ほどエネルギーを多く作り出すわけですが、ミトコンドリアが多く存在しているのは筋肉細胞です。筋肉は基礎代謝のうち35~38%ものエネルギーを作り出しています。これは日本人の平均的な消費エネルギー量の割合で、筋肉が多い人ほどエネルギーが多く作られ、体温も高まることになります。欧米人や肉食が多い北方系のアジア人は筋肉量が多く、それだけエネルギー産生も多く、体温が高くなっています。
男女で比べると男性は筋肉量が多いこともあり、消費エネルギー量が多く、それを反映して1日の摂取エネルギー量は平均すると男性は女性に比べて25%ほども多くなっています。
筋肉が少ない日本人が消費エネルギー量を増やして体温を高めるためには、筋肉を動かすのが一つの方法です。筋肉量が少ない分だけ身体を動かすとすると、筋肉量が少ない女性は相当に体を動かす必要があり、運動量が少なくなると女性のほうが体温は高まりにくくなるわけです。だから、女性には歩く機会を増やすことがすすめられます。
筋肉量が少ないのは、女性は脂肪が多いことも理由としてあげられます。脂肪細胞というと、余分なエネルギーを蓄積しておく貯蔵庫という印象があるかもしれませんが、脂肪細胞の中には血液が送りこまれ、脂肪細胞の中ではホルモンや生理活性物質が作られています。これらの成分が脂肪細胞から出ていくのは血管で、この血管を通じて脂肪も出入りしています。
女性は男性に比べて10%以上も脂肪細胞が多くなっています。そのために、脂肪細胞に送られる血液も多くなり、その分だけ身体を温めるために使われる血液が減ることになります。これは女性に限ったことではなく、男性でも内臓脂肪が多く蓄積されている人は、そこに血液が使われて、やはり全身を巡る血液が減ることになります。
内臓脂肪として脂肪が多く蓄積されていると、その脂肪が血管を圧迫することから血流が低下するようになります。脂肪細胞の中に多く脂肪が蓄積されていることは正常な状態ではないため、脂肪細胞の中に蓄積されている中性脂肪を分解して脂肪酸を血液中の放出するようになり、分解を進める働きがある興奮ホルモンのアドレナリンが多く分泌されます。その分泌は、脂肪細胞が正常な量に減るまで出続けています。アドレナリンには血管を収縮させ、血圧を上昇させる作用があるため、血流が弱まることになり、その結果として冷えることになるのです。