歯科健診をきっかけとした口腔の健康が全身の健康に影響を与えることについては多くの企業が実施した結果を発表していることですが、歯科衛生に関わる企業は自社だけの成果に終わらず、外部にも発信し、協力を進めています。
その一つであるライオン株式会社は、株式会社日立製作所の日立健康管理センタと協働で、企業における歯科健診の導入と従業員の口腔・全身の健康に及ぼす影響について調査研究を行っています。
人間ドックと歯科健診をともに受診した日立グループの従業員(7763名)を対象に、問診データからオーラルケア行動と生産性との関連について解析されました。
オーラルケア行動に関する問診は、1日の歯みがき回数、フロス使用率、歯科通院率などで、このほかに唾液検査と口腔内カメラによる撮影が実施されています。
その結果、オーラルケア行動が増加した従業員は、生産性を評価する指標の一つであるプレゼンティーズム(心身の不調を抱えながら業務を行っている状態)が有意に改善していることがわかり、歯科健診をきっかけとしたオーラルケア行動変容が従業員の生産性に寄与することを発表しています。
歯科健診は、2022年の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太方針)に、生涯を通じた歯科健診(国民皆歯科健診)の具体的な検討が盛り込まれるなど、歯科健診に注目が集まっています。
しかし、働く人の歯科健診は一部の危険を生じる職場で義務化されているだけで、積極的に歯科健診を取り入れる企業は少ないのが現状です。それは歯科健診を導入した場合の企業側のメリットが認識されていないことが多いからで、具体的な成果をあげた例として、ここで紹介している歯科健診の導入と従業員の口腔・全身の健康に及ぼす影響は高く評価されています。
また、研究の結果、オーラルケア行動(1日の歯みがき回数、フロス使用率、歯科通院率)の実践頻度が増加した従業員では、プレゼンティーズム(心身の不調を抱えながら業務を行っている状態)が有意に改善していました。
歯科健診を導入すると経年的にオーラルケア行動(1日の歯みがき回数、フロス使用率、歯科通院率)が増加することは明らかにされてきました。
それを受けてオーラルケア行動の実践頻度の増加とプレゼンティーズムの関連性を検証するために、オーラルケア行動の実践頻度が増加した群と増加しなかった群(不変群)、減少した群とのプレゼンティーズムの変化が比較解析されました。
その結果、オーラルケア行動が増加した群では、そうでない群と比較して有意にプレゼンティーズムが改善していました。
睡眠や運動などの健康習慣は、プレゼンティーズムとの関連がすでに知られていますが、オーラルケア行動とその他の健康習慣、年齢、性別を考慮した条件でも有意な関連がありました。
そのことから、オーラルケア習慣の改善は、他の健康習慣の改善と同様に、生産性向上に寄与する可能性が示唆されました。
〔健康ジャーナリスト/日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕