糖尿病で初めから治療薬を使う理由

前々回の糖尿病は食事と運動が主で、薬は食事と運動が指導どおりにされていなければ効果がない、という話を受けて、「それなのに、なぜ医者は、いきなり薬を出すのか」とか「初めから薬を使わないといけないほど重症な糖尿病患者が多く来ているのか」という質問がありました。なぜ、いきなり薬を使うのかということについては、いくつかの答えがあります。
一つには、医療費に占める医薬品の割合が高くて、薬を出さないと利益が得られない構造があるからとの指摘があります。薬剤費の比率が25%を超えているのは先進国では日本くらいだと言われています。
もう一つは、前の薬剤費の割合とも関連することですが、日本の医療制度が出来高払いとなっているからです。医療費が高いことが知られているアメリカは、医療費が高い分だけ医薬品が占める割合は低くなっていますが、本当の理由は定額制度にあります。同じ病名、同じ治療なら、薬を多く使っても、少なく使っても、もしくは使わなくても得られる診療報酬は同じです。だからアメリカでは、できるだけ薬を使わず、指導での改善に力を入れます。
これに追加するなら、日本は医師が栄養指導をしても栄養指導料が保険点数にならないということがあります。収益にならないのに一生懸命に指導をするのは、これはボランティアです。この日本の制度は、日本メディカルダイエット支援機構の理事長の栄養学の師匠が、日本栄養士会の理事長であった時代に奮闘して確立させたことで、保険点数がつくのは管理栄養士による献立作成と栄養指導です。これによって管理栄養士の病院における地位は高まり、業界をあげて絶賛されたものです。
しかし、今にして思うと、医師が栄養指導をするわけでなく、初めから治療薬を使う医師が増えるというきっかけにもなったことを考えると、複雑な思いもしているところです。