シクロデキストリンを使っていれば天然型α‐リポ酸なのか

教育現場を扱った昔のテレビドラマで主人公の教師が「これまで教えてきたことは全部ウソです」という衝撃的なセリフがあります。学校で教えたことが全部ウソであったら大変なことになってしまいますが、教育は現状で正しいとされていることを教えているのであって、後々になって研究が進んで違ったことが判明すると、ひょっとしたら間違いを教えたことになるというのはあり得る話です。そのことを象徴したセリフです。
サプリメントの話をセミナーの中でしたときに、間違いを伝えたかもしれないと反省をしたことがあります。代謝成分のα‐リポ酸は、天然型のR‐αリポ酸と非天然型のS‐αリポ酸があって、体内で作用するのはR‐αリポ酸だけです。ところが、市販のα‐リポ酸サプリメントはR‐αリポ酸とS‐αリポ酸を等量で組み合わせたラセミ体という形になっています。
「半分しか有効成分が含まれていない」という話ではなくて、S‐αリポ酸には糖尿病の人には有害となるという研究結果もあります。動物ではS‐αリポ酸は使用が禁止されています。それは死亡する危険性があるからです。それなのに人間で禁止されていないのは、人間を対象とした試験が行われていないため、危険性が確かめられていないという理屈からです。
R‐αリポ酸は胃液で分解されるので、S‐αリポ酸と組み合わせて分解されにくい状態にしています。R‐αリポ酸だけを摂る方法はないのかというと、シクロデキストリンを用いて包接する方法があります。シクロデキストリンはブドウ糖が輪になってつながった環状オリゴ糖で、R‐αリポ酸の包接に使うことで、胃液で分解されずに腸壁から効果的に吸収させることができます。このR‐αリポ酸の包接に使われているのはγ型のシクロデキストリンです。
これまで私たちは「R‐αリポ酸と表示されたものか、シクロデキストリンが用いられているα‐リポ酸を選ばないといけない」と話してきました。ところが、サプリメント会社の中にはR‐αリポ酸とS‐αリポ酸を組み合わせたラセミ体を使っているのに、シクロデキストリンを使っているところがあります。ここで使われているのはα型のシクロデキストリンです。表示にはα型ともγ型とも書かれていないので、ラセミ体が使われたものを買ってしまうかもしれません。そんなことにならないようにα‐リポ酸とシクロデキストリンが使われた商品を見つけたら、包接体なのか、γ型のシクロデキストリンなのかを販売店で確認すべきです。
α‐リポ酸とシクロデキストリンについては、このサイトの「サプリメント事典」を参照してください。