ファスティングの核心はエネルギー代謝にある

ファスティングを実践するときには期限が設けられています。人間の身体は食事をして、これをエネルギー源にすることで生命維持をしているので、エネルギー源となる糖質、脂質、たんぱく質を断つことができる期限は限られています。もちろん個人差はあり、性別や年齢によっても差はあるものの、生理学的な限界は決まっています。
遭難して水も食べ物も摂ることができない状況で、生命維持ができる期間は一般に3日間だと言われています。水分しか摂れない状態では3週間とされていますが、水分さえあれば全身の細胞の代謝を保って、身体に蓄積されたエネルギー源であるグリコーゲンと体脂肪を利用して、生命を維持していくことができます。その期間が3週間とされているわけですが、蓄積されているグリコーゲンと体脂肪が多いほうが飢餓状態に耐える期間が長引くことになります。
遭難しても女性のほうが長く生きられるのは、女性は男性に比較して体脂肪の量が平均的に10%ほど多くなっているからですが、その代わりに男性は筋肉が多くなっています。グリコーゲンは筋肉に蓄積されていて、筋肉が多いほど蓄積量が多くなっています。グリコーゲンはグルコース(ブドウ糖)が結合したもので、肝臓と筋肉(主に骨格筋)で合成され、筋肉に蓄積されています。そして、体内でブドウ糖が不足したときにはグリコーゲンが分解されて、血液中に放出されます。
三大エネルギー源の中でもブドウ糖は最も早くエネルギー化される性質があり、全身の細胞はブドウ糖を取り入れて、細胞内のエネルギー産生の小器官であるミトコンドリアの中でエネルギー物質を作り出しています。
脂肪は脂肪細胞の中では中性脂肪の形となっています。脂肪の最小単位は脂肪酸で、この脂肪酸3個とグリセロール1個が結びついた構造となっています。脂肪酸もミトコンドリアの中でエネルギー物質を作り出す材料となっています。体内の脂肪酸が不足すると、脂肪細胞に蓄積された中性脂肪が分解され、血液中に放出されています。
タンパク質は全身の筋肉や臓器、器官などを構成する重要な成分であるために、本来なら分解されてエネルギー源として使われることはないものです。しかし、体内のブドウ糖と脂肪酸が限界に近いほど不足した場合にはタンパク質が分解されてアミノ酸となり、いくつかの過程を経てブドウ糖となります。あまりに栄養が不足した状態が長く続くと、筋肉が分解され、さらに内臓を構成するタンパク質が分解されることになって、さまざまな疾患が引き起こされることとなります。