国の健康づくり運動である「健康日本21」では、健康寿命の延伸のために、さまざまな活動について目標を定めて取り組んでいますが、メタボリックシンドローム(metabolic syndrome:内臓脂肪症候群)とロコモティブシンドローム(locomotive syndrome:運動器症候群)の身体機能の改善だけでなく、新たにデメンシアシンドローム(dementia syndrome:認知機能症候群)の改善も幸せな健康寿命の延伸に重要であると認識されています。
健康寿命は「日常的・継続的な医療・介護に依存しないで自分の心身で生命維持し、自立した生活ができる生存期間」のことを指し、この考え方は2000年にWHO(世界保健機関)から示されました。これを受けて、我が国では「日常生活に制限のない期間」として、行きたいところに自由に出かけられる、好きなことができる期間を健康寿命としています。
健康寿命の統計については2016年(平成28年)のデータを見ると、その当時の男性の平均寿命が80.98歳に対して健康寿命は72.14歳と、その差は8.84年となっています。女性の平均寿命は87.14歳に対して健康寿命は74.79歳で、その差は12.35年となっています。女性は長生きになっている分、不健康な期間が長いといえます。
日本人の生涯医療費は約2700万円と膨大な額に達しており、その半分は70歳以降に使われています。男性の平均寿命が80歳とすると、わずか10年の間に1350万円が使われている計算になります。その要因の一つとして、健康寿命と平均寿命の差に当たる不健康な状態で長生きしている期間の長さがあげられます。
この期間は自由に動けない状態であるだけでなく、これまでの生活習慣の結果として、さまざまな身体的な異常や病気が起こり、医療や介護の世話にならなければ生きていけない状況になっているからです。この期間に達するまでに、食事や運動などの生活習慣を見直すことによって、機能低下を抑えることによって10年前の健康状態に戻すことができたなら、健康寿命を大きく延伸させて、医療費も半分に抑えることができる可能性があります。
健康づくりの三大要素の運動、栄養、休養のうち、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)、デメンシアシンドローム(認知機能症候群)のすべてに直接的に関わるのは継続的な運動習慣です。