038 ダイエットの運動は血管を弱くするのか

運動をするとエネルギー代謝によって体脂肪を減らすことができます。それはよいことであっても、「運動によって活性酸素が発生するのでよくない」と発言する人もいます。そこでダイエットのためには運動ではなく、食事のコントロールを中心にするべきだという人までいます。これは活性酸素のことが知られるようになったときに、活性酸素は運動をすると発生量が増える、活性酸素が血管を老化させるという話が広まり、運動のやりすぎに警鐘が鳴らされたことがあるからです。
活性酸素というキーワードはテレビの健康番組で広まったこともあり、家庭でテレビを見る時間が長い患者は知っているのに、あまりテレビを見ない医療関係者はよくわからないということがあり、患者と医師や栄養士との話がかみ合わないということもあったものです。日本メディカルダイエット支援機構の相談役の久郷晴彦薬学博士が、栄養士向けの講習の依頼を受けて活性酸素の話をしたとき、私たちが頼りにしている栄養士団体の幹部の先生方でも、よくわかっていなかったということを経験したものです。
運動をすると活性酸素が増えるというのは確かなことですが、運動量に比例して活性酸素の発生量が増えるとわけではありません。身体の中には活性酸素を消去する抗酸化酵素があり、この抗酸化酵素が働くためには酸素が必要です。運動を始めて酸素を多く吸い込むことで活性酸素が増えても、抗酸化酵素の働きも盛んになるので、それほど活性酸素は増えていかないのです。最大酸素摂取量の70%ほどまでは少しずつ増えるだけですが、それを越えると一気に活性酸素の発生量が増えます。だから、無理をしない程度の運動では活性酸素をあまり気にしないでよいことになるのです。