健康情報102 イワシ・サバ類等の摂取量と非感染性疾患の死者数

赤身肉(牛・豚・羊などの肉)、特に加工赤身肉は、非感染性疾患のリスク増大と関連することが報告されています。

非感染性疾患による死亡は、2000年(約3100万人)から2019年(約4100万人)の間に30%以上増加し、2019年の世界のすべての死亡原因の約70%を占め、その77%が低・中所得国で発生しています。

このうち、虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)、脳卒中、糖尿病、大腸がんの4つの病気による死亡は44%(約1800万人)を占めています。

持続可能で健康的な食事に対する世界的な関心が高まる中、代替タンパク質の利用が注目されています。海産物、特に小型浮魚類(イワシ類、サバ類等)は赤身肉に比べて生産時の温室効果ガスの排出負荷が大幅に低く、人体に必要な栄養素を豊富に含み、非感染性疾患のリスクを軽減することが指摘され、有効な代替タンパク質源の一つとなる可能性を秘めています。

しかし、現在、人間が消費しているのは漁獲された小型浮魚類の約26%に過ぎず、残りの74%は魚粉や魚油の製造に使われています。製造された魚粉や魚油は、主に高所得者向けのサケやマスなどの養殖魚の飼料として使われていますが、小型浮魚類に含まれる栄養素のほとんどが養殖中に失われるため、非効率的です。

例えば、養殖サケは生産時に消費する全タンパク質量の25%相当のタンパク質しか供給することができません。持続可能で健康的な食事を実現するために、小型浮魚類の消費拡大を提唱する研究は増えていますが、魚粉や魚油の製造に使用される小型浮魚類を人間が消費することで、世界の疾病負担が、どの程度軽減されるかは明らかではありませんでした。

国立環境研究所、産業技術総合研究所、サンシャイン・コースト大学による環境・健康・水産資源分野の専門家で構成される国際共同研究チームは、持続可能で健康的な食事の実現のために、2050年までに赤身肉を環境にも健康にも良い小型浮魚類に代替した場合の、世界的に急増している4つの非感染性疾患予防の影響を定量的に評価しました。

その結果、2050年には赤身肉消費量の最大8%が小型浮魚類に代替されることができ、非感染性疾患による世界の死亡者数が50万人から75万人減少し、さらに4つの疾患によって失われる健康年数が800万円から1500万年(1人につき約16年から20年)減少する可能性があることがわかりました。

これは2000年から2019年の4疾患による死亡者数の増加量(480万人)の10%から16%、障害調整生存年数の増加量(1億300万年)の8%から15%に相当します。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕