259 血糖対策のウォーキング

運動を始めると、筋繊維(筋肉細胞)の中ではエネルギー不足の状態が起こります。これを解消するために、できるだけ多くのエネルギーを作り出そうとして細胞のミトコンドリアの中でATP(アデノシン三リン酸)がリンを二つ離してAMP(アデノシン一リン酸)に変化することでエネルギーが作り出されます。細胞内にAMPが多くなると、エネルギーの枯渇状態を感知してAMPK(アデノシン一リン酸キノーゼ)という酵素が活性化します。このAMPKが指令を出して血中のブドウ糖が取り込まれるという仕組みになっています。
ATP系のエネルギー消費は10秒間ほどで終わり、そのあとは乳酸系と呼ばれる無酸素状態でブドウ糖を主にエネルギーとして使う運動となりますが、乳酸系運動は10分ほどしか続かず、そのあとも運動を続けると、有酸素系と呼ばれる脂肪とブドウ糖をエネルギーとして使うエネルギー代謝へと切り換わっていきます。
ウォーキングを始めたときには、平常時に比べると多くのエネルギーを、すぐに作らなければならないので、燃焼しやすいブドウ糖を先に燃焼させます。ブドウ糖が中心になって燃焼するのは10分間ほどです。そのため、血糖値を下げるためには10分間のウォーキングを何度か繰り返す方法がすすめられます。
血糖値が高いことを指摘されて、運動をするように言われると、以前に運動をしていた人は、その運動を再開させたり、走ったりしがちです。しかし、血糖値が高めの人に激しい運動は禁物です。心拍数が高まりすぎる運動は、心臓や血管の負担が大きくなります。血糖値が高い状態が続いていると血管の細胞が傷みやすくなり、強い負担がかかります。それが合併症のきっかけとなることも考えられます。歩くことは血管にダメージを与えない運動という意味でもすすめられています。