栄養摂取は発達障害の状態を左右します。中でも発達障害で大きく影響を与えているのは神経伝達で、神経細胞の状態(配線状態のようなもの)は通常どおりであっても、神経細胞から次の神経細胞に情報を伝えていく神経伝達物質の量が不足していると、神経の働きを正常に保つことができなくなります。
そのために、脳の機能調整がうまくいないことにもなるのですが、発達障害がある人(子どもも大人も)の場合には、神経伝達物質のセトロニンが不足していることが知られています。
セロトニンは自律神経の副交感神経の働きを盛んにして、心身の働きを抑制する方向に導いてくれます。セロトニンが不足していると、興奮系のドーパミンやアドレナリンの働きが高まり、交感神経の働きを盛んにしてしまいます。
そのために心身ともに興奮しやすくなっている状態で、これに対して精神を落ち着かせる行動だけで対処しようとしても、なかなか困難なことです。
セトロニンを増やすには、その材料となる必須アミノ酸のトリプトファンを摂ることが必要で、トリプトファンは大豆や豆類、乳製品に多く含まれています。
これらの食品を多く食べればよいのかというと、そう簡単なことではありません。セトロニンはトリプトファンから脳内で作られているものの、その割合が10%ほどでしかありません。残りの90%ほどは腸内で作られています。
腸内環境は腸内細菌の善玉菌によって保たれていて、腸内の血流促進によって善玉菌が増えやすい環境を作るのも、大腸の蠕動運動を盛んにして善玉菌が増えやすい酸性傾向の状態にするのも、副交感神経の働きが重要になります。
副交感神経は蠕動運動を盛んにするとともに、腸内の血流を盛んにして善玉菌が増えやすい温度にすることにも関わっています。副交感神経の働きをよくするにはセロトニンが多く作られる必要があるということで、この関係をよい循環にしていくためには、腸内環境を整えることが重要ということになります。
〔発達栄養指南:小林正人〕