なぜ母親への発達障害支援が重要なのか

発達障害児に限らず、子どもの発育は親にかかっています。中でも母親にかかる負担が大きくなっていますが、発達障害児となると特異な行動だけでなく、感覚過敏と感覚鈍麻による味覚、視覚、聴覚、嗅覚、触覚の特徴的な状態から、日常生活での対応は尋常ではありません。だから、発達障害児の母親への教育と情報の支援が重要だと言われているわけですが、子どもが発達障害になったら発達障害児支援施設に頼ればなんとかなると考えている向きもあります。
しかし、発達障害児支援施設の中には、母親の支援まで手が回らないところが少なくありません。少なくないどころか、ほとんど支援がされていないという地域があるのも事実です。では、発達障害児支援施設での母親への支援を多くの対象者が声を大にして叫べば、それを行政なりが聞き届ければ解消されるのかというと、そんな単純な話ではありません。
児童の10%が発達障害とされる状況では、発達障害児支援施設はあまりに不足しています。岡山県を例にすると、岡山県には現状で発達障害児支援施設が146事業所あります。1日の利用定員数は10人の事業所が多く、週に1回の利用とした場合の定員は50人となります。稼働率が100%であった場合には約7300人の受け入れが可能となっています。岡山県内の児童数は約24万人であり、発達障害児の割合が10%とすると約2万4000人と推定されます。この計算からすると、発達障害児支援施設を利用できるのは全体の3分の1以下で、残りの3分の2以上は通所しての発達支援が受けられない状況であることがわかります。
これは他の地域においても似たような状況です。発達障害児支援施設での子どもの支援が受けられず、しかも母親の支援もされていないとなると、社会的に発達障害児の母親を支援して、家庭でのケアをする方法を考えていくしかありません。その支援は自治体が相談事業を実施するだけでは足りず、地域にある発達支援に関わる職能団体が、それぞれ連携して過去の実績と知恵を普及するようにしなければならないと考えています。そのためのモデルケースが医療・福祉・教育で実績がある岡山県で始められないかとプランニングしているところです。