ほしがりません“カツ”までは

高校野球では「以前は“敵に勝つ”にちなんで、ビフテキ(ビーフステーキ)とトンカツを試合前に食べていた」という話があり、野球中継の中でも紹介されたことがあります。以前にということで昔の話、今はやっていない話と思っていたら、今も縁起担ぎで牛肉のステーキと豚肉のカツを朝食で食べてから試合に臨んでいるチームがあるというので驚かされました。
肉は重要なエネルギー源であり、動物性のたんぱく質と脂肪は身体を丈夫にして、元気に動けば脂肪もエネルギーとして活用することができます。そのことは正しい話ですが、脂肪の摂りすぎは運動の能力を高めるどころか、逆にパワーも活力も低下させて、試合に勝つための食事だったつもりが、負ける要因にもなりかねません。というのは、血液中の脂肪が増えすぎると赤血球の流れが悪くなり、酸素を全身に届ける能力が低下して、瞬発力も持久力も、そして判断力も低下しかねません。
血液中の赤血球は毛細血管を通過して全身の細胞に酸素を届け、全身の細胞から二酸化炭素を回収してきます。毛細血管は約8μm(マイクロメートル)の直径があります。イメージしやすいものにたとえると蜘蛛の糸の太さです。その中を通過する赤血球は10μmと毛細血管よりも大きく、つぶれるようにして通過していきます。通過できるのは赤血球が1個ずつバラバラの状態になっているからで、2個以上がくっつくと通過できなくなります。血液中に動物性脂肪の飽和脂肪酸が多くなると赤血球がくっつくようになります。
くっついて通過できなくなった分だけ酸素の供給量が低下して、あと一歩の世界で勝ち負けが決まるスポーツには致命的ともなりかねません。このようなことにならないようにするためには、試合の前日に肉類を多く食べるのはよいとしても、試合の前には、どちらかの肉にするべきです。ステーキを食べたなら、トンカツまではほしがらないというアドバイスをスポーツ選手にはしています。