エネルギー代謝112 脂肪の分解・吸収阻害の医薬品

脂肪の過剰な蓄積は血管にダメージを与えることから、これを予防することは健康づくりの基本とされています。脂肪が蓄積されるのは脂肪細胞で、これは内臓脂肪と皮下脂肪に大きく分けられます。そのうち健康状態に大きな影響を与えるのは内臓脂肪です。

内臓脂肪を減らして健康を維持するためには、食事による脂肪摂取を減らすことと、余分に蓄積された脂肪を消費することがあげられますが、エネルギー代謝の考え方からすると優先してほしいのは後者のほうです。

エネルギー量が高い脂肪を多く摂っても、これを運動などによってエネルギー化することは多くのエネルギーを作り出し、そのエネルギーを使って細胞レベルから元気になってほしいという考え方です。

ところが、話題になっている医薬品のオルリスタットは食品に含まれる脂肪の分解を阻害して、その分だけ脂肪の吸収を抑えようとするものです。食品に含まれる中性脂肪は脂肪酸3つがつながった形をしていて、このままでは分子構造が大きいために腸壁から吸収されません。

そこで、脂肪分解酵素のリパーゼが働いて、脂肪酸の結合を解き放して、1つずつの脂肪酸にすることによって吸収されるようにします。

オルリスタットにはリパーゼの活性を阻害する作用があります。中性脂肪の摂取量とオルリスタットの摂取量によって、どれだけの分解が阻害されるのかが違ってきますが、医薬品としての一般的な効果は摂取した脂肪の25%ほどとされています。

この研究は2001年には海外で論文発表されていて、医師の処方箋なしに薬局で購入できることになりましたが、吸収される量を減らせば、それで内臓脂肪が減るのかというと、そう簡単にはいきません。

脂肪酸は細胞に取り込まれてから細胞の中にあるミトコンドリアに入って、エネルギー化されます。脂肪酸はミトコンドリアに自動的に通過するわけではなくて、代謝促進成分のL–カルニチンと結びつかないとミトコンドリアの膜を通過することはできません。

L–カルニチンは体内で合成されるものの、そのピークは20歳代前半で、それ以降は合成量が減っていきます。L–カルニチンが減っていくので、同じ食事量、同じ運動量では太っていくようになります。

脂肪の摂取量を減らしても、なかなかやせないという人はL–カルニチンが減っていることが考えられるので、これをサプリメント成分として摂ることも考えるべきです。
(日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人)