ポストコロナ「憎まれっ子世にはびこる」2

“多様性の時代”と言われます。これはオリンピックとパラリンピックの開会式、閉会式でアピールされた多様性と調和の理念からも感じられるように、人種や性別、言語、宗教、障害の有無などの違いをお互いに認め合い、多様な考えを活かしながら社会を前に進めていこうという考え方です。開会式と閉会式では性の多様性が強調されすぎたようにも感じますが、コロナ後の時代を考えるときには、この多様性がなければコロナ前のような進展は望みにくいということがいえます。
「憎まれっ子世にはびこる」というテーマを掲げている一つの例としてあげるのは発達障害者で、はびこってほしいと考えている仕事の場はデジタル社会です。野村総合研究所が「デジタル社会における発達障害人材の更なる活躍機会とその経済的インパクト」という報告書を2021年3月30日に発表しました。発達障害は自閉症スペクトラム障害、注意欠陥・多動性障害、学習障害が特徴的で、子どもの10%に存在しています。成長しても特性は変わらず、発達障害のために困難さを抱えている社会人も同じ割合で存在しています。
どの発達障害も社会的なコミュニケーションが苦手で、これまでの社会であったら戦力になりにくかったかもしれませんが、デジタル社会では特徴的な発想と行動をする人材は「憎まれっ子世にはびこる」存在で、仕事の場で、まさにはびこってもらわないと、コロナ禍で停滞した経済も社会保障なども成り立たない状態になっています。超高齢社会で介護に人材が奪われ、厚生労働省の「厚生労働白書」では2040年に全労働人口のうち医療と福祉に20%が必要と発表されています。
それだけに人材が取られてしまったら、他の世界は10%の新たな働き手が、どうしても必要な存在となります。
野村総合研究所によると、今現在の発達障害者をIT産業で活かせないことは年間2兆3000億円の経済損失となっていて、2030年時点で79万人不足すると推計されています。それだけに、自分の得意なことには力が発揮できる発達障害者をIT産業ではびこってもらいたいというのが時代の流れです。そして、コロナ禍を経験して、その動向に拍車がかかりました。