乳酸菌は腸内では長く生き残れない

善玉菌の栄養源となっているオリゴ糖は糖質の一種で、善玉菌の代表であるビフィズス菌が好んで取り込んでいます。ビフィズス菌は赤ちゃんの腸内では腸内細菌の90%ほどを占めていますが、成人になるとビフィズス菌の割合は10%ほどにも低下し、それ以降は減っていく一方となります。そこで、オリゴ糖を摂って、ビフィズス菌を増やそうしています。
腸内環境を整えるために摂る乳酸菌のことをプロバイオティクスといいます。ヨーグルトやサプリメントの乳酸菌やビフィズス菌などだけでなく、納豆、味噌、漬け物などの乳酸菌が含まれる発酵食品もプロバイオティクスとされています。これに対して、善玉菌を活性化させる栄養源となるものはプレバイオティクスと呼ばれていて、これに当たるのはオリゴ糖です。
プロバイオティクスとして乳酸菌を摂るときに、100億個を目安と考えている人が少なくありません。この100億個という数は、乳酸菌をすすめるテレビコマーシャルによく登場します。100億個を摂ると、腸の中で善玉菌が大きく増えるような印象が抱かれがちですが、腸内細菌全体の数と比べると、かなり少ない数です。乳酸菌は腸内細菌の善玉菌の仲間で、乳酸菌が含まれたヨーグルトなどの乳製品、サプリメントで摂れば、腸内では善玉菌として働いてくれそうな感じがします。
腸内細菌は約1000兆個も存在しているので、100億個の乳酸菌は10万分の1の数でしかありません。腸内細菌の善玉菌の割合はよい腸内環境の人で20%、悪玉菌が10%、日和見菌が70%と一般に説明されていますが、善玉菌が20%と計算しても100億個は2万分の1で、これも大きな違いとなっています。2万分の1であっても、毎日摂り続けていれば徐々に増やしていけるのではないか、という発想をしがちで、これで計算すると1年続ければ55分の1の量になります。
ところが、人間の身体は計算通りにはいきません。腸まで届いた乳酸菌が、もともと腸内にいた善玉菌と同じように腸内に定着してくれればよいわけですが、外から届けられた乳酸菌は腸内では1~2日しか生存できません。しかし、乳酸菌を摂り続けていると、腸内の善玉菌が増えていき、徐々に便通がよくなっていくことは事実です。食品やサプリメントとして腸内に届けられた乳酸菌は、腸内で生き残っている間に発酵を進めていきます。発酵すると酸性成分が作られます。乳酸菌によって作られたヨーグルトは酸性になっていきますが、腸内でも発酵が進むと同じことが起こっています。
善玉菌は酸性傾向の中で増殖して、発酵も進めていくので、乳酸菌によって作られた酸性成分によって酸性傾向が強まっていきます。その環境の中で善玉菌が増えていくため、サプリメントなどで摂った乳酸菌が、あたかも腸内にとどまって、善玉菌を増やしたのと同じ結果となるわけです。