発達栄養学33 必須栄養素から考える糖質の存在

三大栄養素は糖質、脂質、たんぱく質で、これらはエネルギー源となることから三大エネルギー源とも呼ばれています。糖質、脂質、たんぱく質の順で示されることが多いのは、早くエネルギー源として使われる順で並べられているからです。糖質は細胞で先にエネルギー代謝に使われますが、糖質のブドウ糖は脳の唯一のエネルギー源であることから糖質不足は脳の機能に直接的に影響してきます。
しかし、糖質制限によって健康を維持することを目的とした健康法では、「糖質は必須栄養素になっていない」という主張がなされています。必須栄養素は体内では合成されないために食事から摂る必要がある栄養素のことで、脂質を構成する脂肪酸で必須脂肪酸となっているのはリノール酸とα‐リノレン酸です。たんぱく質を構成するアミノ酸で必須アミノ酸となっているのはトリプトファン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、バリン、ロイシン、イソロイシンです。
必須脂肪酸、必須アミノ酸に対して、“必須ブドウ糖”という言葉は存在していません。体内でブドウ糖が不足すると乳糖、アミノ酸、ピルビン酸、プロピオン酸などの糖質以外の成分からブドウ糖を合成する糖新生が起こります。糖新生はブドウ糖からエネルギーが作られる経路の逆行で、この仕組みがあるからブドウ糖を摂取しなくてもよいという考えがされることがあります。しかし、糖新生は飢餓状態など身体の危機的状況に対応する仕組みであって、常に体内で起こってよいことではありません。全身の細胞のブドウ糖を用いたエネルギー代謝も低下するなどの悪影響も起こります。1日に必要なブドウ糖は150gとされていて、糖質では1日に必要320gは必要とされています。“必須ブドウ糖”という言葉が存在していないのは、もともと必須であって摂取しなければならないのが当たり前のことだからです。
ちなみに必須ビタミンは、脂溶性ビタミンのビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、水溶性ビタミンのビタミンB群(ビタミンB₁、ビタミンB₂、ナイアシン、ビタミンB₆、葉酸、ビタミンB₁₂、ビオチン、パントテン酸)とビタミンCです。必須ミネラルはカルシウム、リン、カリウム、イオウ、塩素、ナトリウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、クロム、ヨウ素、セレン、モリブデン、コバルトです。