健康ウォーキング11 日本人の健康度の変化と認知機能

日本老年学会と日本老年医学会は、65歳以上とされる高齢者の定義を75歳以上に引き上げるべきだとする国への提言を発表しました。高齢者の健康データの分析から身体が健康な高年齢者が増え、過去に比べて加齢に伴う身体機能の変化の出現が5〜10年遅れていることが明らかになったことを受けたもので、65〜74歳を准高齢者、75〜89歳を高齢者、90歳以上を超高齢者と分類しています。
日本人の平均寿命が男女ともに50歳を超えたのは1947年(昭和22年)のことで、先進国の中では最下位であり、当時の長寿国とは20年もの開きがありました。1950年(昭和25年)には、女性の平均寿命が60歳を超え、1955年(昭和30年)には男性も60歳を超え、それ以降は急速に平均寿命が延びました。1977年(昭和52年)には男性の平均寿命が77.69歳と世界第1位となり、続いて1984年(昭和59年)には女性の平均寿命が80.18歳と世界第1位となりました。最新データの2020年(令和2年)の平均寿命は男性が81.64歳(第2位)、女性が87.74歳(第1位)となっています。
身体の若返りに対して脳機能は年齢に比例して老化が進んでおり、脳機能の保持・向上が国の重要な対策事項となっています。認知症患者は462万人、その予備群である軽度認知障害患者は400万人と推定され(2012年統計)、これを合わせると65歳以上人口の4人に1人の割合となっています。認知症と軽度認知障害の患者は高齢化が進む我が国においては増え続ける一方で、2025年には認知症患者は700万人、軽度認知障害は600万人を超えると推定され、合わせると65歳以上人口の3人に1人にも達する割合となります。
軽度認知障害(MCI:Mind Cognitive Impairment)は厚生労働省研究班によって認知症の前段階として位置づけられています。軽度認知障害と認知症は特定の疾患ではなく、認知機能低下症状におけるステージや状態を示すもので、潜在的な疾病、疾患や身体状態が引き金になるとされています。
軽度認知障害のリスクとしては、加齢に加えて脳卒中(隠れ脳梗塞を含む)、心疾患(心筋梗塞など)、糖尿病、脂質異常症(高中性脂肪血症、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症)、高血圧、メタボリックシンドローム、肥満、喫煙歴、アルコール・薬物の影響、不健康な食生活、心身エクササイズの欠如、ストレスや不安、うつ病、社会的孤立などがあげられています。
国による新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)では認知機能低下のリスク要因の疾病・疾患を早期に特定し、早期に適切な介入を行うことが推奨されています。しかし、軽度認知障害と診断されても的確な治療薬がないとされ、バランスの取れた栄養補給、適度な運動習慣、充分な休息が主な改善指導となっています。こうした指導によって軽度認知障害からの改善が見られる人は約10%で、約40%が軽度認知障害のままで維持され、約50%が5年程度で認知症に進行しています。このような状態を改善するために、エビデンス(科学的裏付け)に基づいた効果的な運動の実施のための指導が求められています。