健康寿命延伸のための提言23 提言のエビデンス3食事1

国立高度専門医療研究センター6機関(国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター)が連携して、研究成果として「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」を公開しています。提言のエビデンスの解説(第1回)を紹介します。
日本人の食事と日本食は違うものです。日本人は、ご飯があると、ほとんどの料理を食べることができます。日本人ほど世界中の料理を食べている国民はいません。そのことが多くの食品、栄養素を摂る好環境になる一方で、食べすぎや塩分の摂りすぎにもつながっています。
食塩や高塩分食品の摂取量を控えることは、日本人に多い胃がんや高血圧、脳卒中の予防につながると考えられています。日本人を対象としたコホート研究では、食塩摂取量の多い群で胃がんのリスクが高まることが男性で示されました。女性でははっきりした関連は見られなかったものの、いくら、塩辛、練りウニなどの特に塩分濃度の高い食品を摂る人ほど胃がんのリスクが高いことは男女に共通して見られています。また、漬物、塩魚、塩蔵魚卵などの高塩分食品摂取の多い群でがん全体、また胃がんのリスクを高めることが示されています。しかし、食塩摂取量(ナトリウム相当量)とがんとの間には明確な関連は認められていません。その一方で、同じ研究から、食塩摂取量の多い群では、脳卒中のリスクが高くなることが示されています。
1日あたりの食塩摂取量としては、できるだけ少なくすることが望まれますが、厚生労働省は日本人の食事摂取基準として、男性は7.5g未満、女性は6.5g未満を1日あたりの目標値として設定しています。また、高血圧と慢性腎臓病の重症化予防を目的とした量として、1日6g未満を推奨しています。なお、国際的には5g未満が目標とされています。また、減塩に加えてDASH食(高血圧を防ぐ食事法)にすることで高血圧を予防して、循環器病のリスクの低下にもつながると考えられています。