健康寿命延伸のための提言35 提言のエビデンス3食事13

国立高度専門医療研究センター6機関(国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター)が連携して、研究成果として「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」を公開しています。提言のエビデンスの解説(第13回)を紹介します。
FAO(国際連合食料農業機関)のデータベースに基づく食料供給量をG7各国と比較すると、日本では肉類、牛乳・乳製品、砂糖・甘味料、果物、芋類は少ない一方で、魚介類、精白米、大豆、お茶が多い特徴があります。このような日本の食事は、肥満者割合が低いことや、虚血性心疾患や乳がん・前立腺がんによる死亡率が低いことと関連しているデータが多く示されています。一方で、食塩や塩蔵食品が多く、肉類や乳製品からの飽和脂肪酸やカルシウムの少ないことも特徴であり、これらは脳卒中や胃がんによる死亡率が高いことと関連していると考えられます。
日本人の食事に特徴づけられる、それぞれの主要な食品の健康影響については、日本人のエビデンスも蓄積されています。例えば、魚や、魚に多く含まれるオメガ3脂肪酸の多摂取は虚血性心疾患や糖尿病のリスクの低下と関連することが示されています。また、お茶の多摂取は総じて健康にはよい影響をもたらしていると考えられます。
さらに食事を摂取する食品の多様性からとらえた場合、食品摂取が多様であることや関連して食事バランスガイドを遵守することが早死を予防するなど、健康によい影響を及ぼすこともわかってきています。一方で、これらの食品ごとや摂取食品の多様性・バランスの健康影響に関するエビデンスは充分とは言えず、さまざまな異なる集団で同様の関連がみられているとは限らず、まだまだ研究は不足している状態です。
戦後のいわゆる食の欧米化は、肉類や乳製品の摂取の増加と食塩・塩蔵食品の摂取の減少をもたらし、脳卒中や胃がんの死亡率の低下につながり、このことが日本人の平均寿命を世界トップレベルにしたと考えられます。言いかえると、従来から多く摂取されてきた大豆などの植物性食品、魚介類、砂糖を用いない緑茶に象徴されるような食事に、肉類や乳製品などによる適度な欧米化が加わった現在の日本人の食事が、健康によい影響を及ぼしていると考えられています。