健康寿命延伸のための提言37 提言のエビデンス4体格2

国立高度専門医療研究センター6機関(国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター)が連携して、研究成果として「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」を公開しています。提言のエビデンスの解説(第2回)を紹介します。
体格指数のBMIと何らかのがんを罹患するリスクとの関係を調べた日本人中高年期(40〜69歳)男女約9万人を対象としたコホート研究では、男性のBMI21未満でのみ、リスクの上昇が認められました。また、別の日本人中高年期(40〜64歳)男女約3万人を対象とした研究では、女性のBMI27.5以上でのみ、リスクの増加が認められました。このように、BMIとがん全体との関係は、欧米とは異なり、日本人においては、それほど強い関連がないことが示されています。国内の8コホート研究を統合した研究によると、がんの中では特に大腸がんや乳がん(閉経前後ともに)で、BMIが大きければ大きいほどリスクが高くなることが報告されています。
糖尿病、高血圧、脂質異常症など、肥満度が低いほどリスクが低下する疾患もあります。例えば、糖尿病の場合、BMIが1kg/㎡増加するごとに男性で1.3倍、女性で1.2倍リスクが上がることが示されています。また、成人期の体重増加により、循環器病、糖尿病のリスクが増加します。例えば、過去5年間の体重変動は、女性において10%以上増加した人は、体重変化が±3%以内の人に比べて、脳卒中リスクが1.5倍上昇していたことが確認されています。
栄養不足を伴うやせでは免疫力が弱まって、感染症にかかりやすくなったり、血管を構成する壁がもろくなり、脳出血を起こしやすくなることも知られています。
肥満とうつ(うつ症状)との間には関連があり、8研究のメタ解析によれば、肥満の人にはうつ(うつ症状)のリスクが1.6倍高く、9研究のメタ解析によれば、うつ病(うつ症状)の人では肥満のリスクが1.6倍高いと報告されています。他にも、妊婦を対象に肥満によるうつ症状発症のリスクが産前(1.4倍)、産後(1.3倍)ともに高いことを報告した研究や、肥満の児童はそうでない児童と比較して青年期のうつ病を発症するリスクが高い(1.3倍)ことを報告した研究があります。