発達栄養学110 エネルギー代謝に必要なビタミンB群

脳を含めた全身を働かせるためには細胞の中のミトコンドリアで作られるエネルギー物質のATP(アデノシン三リン酸)が必要です。ATPを作り出すためには4種類のビタミンB群(ビタミンB₁、ビタミンB₂、ビタミンB₆、ビタミンB₁₂)が必要で、一つでも不足するとエネルギー産生が大きく低下することになります。
特にエネルギーが必要なのは脳で、全身の重量の2%ほどしかないのに、エネルギー源消費量は20%ほどを占めています。エネルギーが不足すると脳の機能に大きな影響が出ることから、特に脳を働かせることが多い子ども、脳に負担がかかっている子どもは絶対にビタミンB群を欠かすことはできません。
ビタミンB群は水溶性のために体内の保持時間が短く、ビタミンB₁とビタミンB₂は24時間保持されるものの、ビタミンB₆とビタミンB₁₂は12時間ほどしか保持されません。そのため、食事で摂取する場合には朝食と夕食でビタミンB群が含まれた食品を食べる必要があり、不足する場合には12時間ごとに摂る必要があります。
ビタミンB₁は糖質のエネルギー代謝に必要な補酵素としての働きがあり、疲労回復のビタミンとも呼ばれます。脳の唯一のエネルギー源でもあるブドウ糖を、エネルギーとして利用するときにビタミンB₁が必要で、不足すると脳の低血糖状態を引き起こし、中枢神経や末梢神経の働きが低下します。食品では、豚肉、ウナギ、カツオ、レバー、大豆、ニンニクなどに多く含まれます。
ビタミンB₂は、糖質、脂質、たんぱく質のエネルギー代謝の補酵素で、特に脂質の分解・合成に深く関わっているため、不足すると血液中の中性脂肪や体脂肪の増加を引き起こします。ビタミンB₂が欠乏すると口内炎、舌炎症、口唇炎、角膜炎などが起こります。脂質の摂取が多くなるとビタミンB₂の必要量が増え、体内で不足しやすくなります。食品では、ウナギ、サンマ、レバー、大豆、牛乳などに多く含まれます。
ビタミンB₆は、糖質、脂質、たんぱく質のエネルギー代謝の補酵素で、特にたんぱく質の分解・合成に深く関わっているため、不足すると貧血や肌荒れ、湿疹、神経系の異常などを引き起こします。食品では魚や肉に多く含まれますが、調理したり、加工食品にすると失われやすくなっています。
ビタミンB₁₂は、脂質のエネルギー代謝の補酵素で、中枢神経や脳の機能を維持する作用があります。造血作用に関わり、葉酸とともに骨髄で正常な赤血球を作り出すのに欠かせません。食品では、レバー、肉、魚介類などの動物性食品に多く含まれます。動物性食品を摂らないと不足して、エネルギー代謝に悪影響が出ることにもなります。
朝食によく出てくるハムやベーコン、目玉焼き、牛乳は、代謝を考えると理にかなった内容だったということです。