健康寿命延伸のための提言40 提言のエビデンス5身体活動1

国立高度専門医療研究センター6機関(国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター)が連携して、研究成果として「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」を公開しています。提言のエビデンスの解説(第1回)を紹介します。
身体活動と非感染性疾患、うつ、認知症、運動器の機能低下のリスクとの間には負の量反応関係がみられます。1メッツ・時/日(1日に2〜3分)身体活動が多くなる毎に、これらのリスクが0.8%ずつ有意に低下することが報告されています。また、1日1000歩(10分/日)増やすことができると答えた人の割合は60.8%であることが報告されています。
日本人を対象としたコホート研究では、仕事や運動などからの身体活動量が高くなるほど、がん全体のリスクは低くなることが示されています。さらに、身体活動量が高いと心臓病による死亡リスクも低くなることから、脂肪全体のリスクも低下することが明らかになっています。糖尿病については、世界の81研究のメタ解析で身体活動量が多い群のほうが低い群よりリスクが35%低いことが示されています。
また、日本の前向き研究で、高強度の身体活動や長い歩行時間による糖尿病リスクも低下を示した研究、さらにテレビ視聴時間が長いことによる糖尿病リスクの増加を示した研究があります。高血圧患者に対しての介入研究では、軽度の運動トレーニング群の方が非トレーニング群よりも血圧が低下しました。身体活動量を高く保つことは、健康で長生きするための鍵になりそうです。
611,583人(うつ病患者143,265人を含む)を対象とした研究により、加速度計によって客観的に評価した身体活動量が多い群でうつ病リスクが低下することが示されています。妊娠中に身体活動を増やすことにより、産後うつのリスクが低下することが報告されています。また、子どもの身体活動を増やすことは、うつを軽減する効果があると報告されています。