健康寿命延伸のための提言43 提言のエビデンス6心理社会的要因1

国立高度専門医療研究センター6機関(国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター)が連携して、研究成果として「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」を公開しています。提言のエビデンスの解説(第1回)を紹介します。
一般的に使われるストレスという言葉には、二つの意味が込められています。一つ目は、個人にとっての負荷の原因という意味で、これを特に「ストレス要因」(ストレッサー)といいます。物理的な要因(温度、照度、騒音など)、化学的な要因(化学物質への職業曝露や大気汚染など)、そして生理学的な要因(細菌、ウイルスなど)もありますが、現代社会において特に問題になるのは、心理社会的なストレス要因です。家庭・学校・職場での人間関係、仕事の失敗や過剰な業務、事故・災害・犯罪・性的被害の経験などが、心理社会的なストレスの要因の例として知られています。
これらのストレス要因が個人の対処能力を超えたものであると認知した場合に生じるのが、二つ目の側面である「ストレス反応」です。心理的な反応(抑うつ状態など)、身体的な反応(視床下部・下垂体・副腎(HPA)系や交感神経系の亢進など)、行動的な反応(不適切なストレス対処行動など)が知られています。そして、これらのストレス反応が持続した場合に、さまざまな疾患(うつ病、虚血性心疾患など)の発生につながると考えられています。
幼少期から高齢期に至るまで、さまざまなライフステージにおける心理社会的なストレス要因が健康影響を引き起こすことが知られています。ストレス要因に、そもそも晒されないことが一番ですが、万一ストレス要因に晒された場合でも個人が対処できるような環境であること(例えばソーシャルサポートが充分に受けられること)もとても重要です。