健康寿命延伸のための提言44 提言のエビデンス6心理社会的要因2

国立高度専門医療研究センター6機関(国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター)が連携して、研究成果として「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」を公開しています。提言のエビデンスの解説(第2回)を紹介します。
アメリカのおよそ2,000人の女性の双生児ペアのコホート研究では、ストレス要因となるライフイベント(暴行、婚姻トラブル、離婚、経済的問題、重大な住宅問題など)により、うつ病発症リスクが増加すると報告しています。また、欧米諸国で行われた57研究のシステマティックレビューによると、上述のようなストレス要因となるライフイベントを妊婦が経験するとうつ病になりやすいことが報告されています。
52か国に居住する11,119人の急性心筋梗塞の患者と、13648人の対照群の症例対照研究では、職場や家庭内で定常的にストレスを感じている人は対照群と比較して心筋梗塞に2.2倍なりやすいことが報告されています。同一の研究では、ストレス要因となるライフイベントを過去1年に2つ以上経験した場合に、一つも経験しなかった場合と比較して1.5倍、抑うつ症状がある場合は、ない場合と比較して心筋梗塞に1.6倍なりやすいことも報告されています。
また、たこつぼ心筋症は、急激な感情の変化によるストレスや肉体的ストレスが誘因となって、心臓の動きに障害が起こる疾患であると考えられています。他にも、職業性ストレスとメタボリックシンドロームの関連を検討した世界の8研究のメタ解析では、ストレスが多い群は少ない群に比べて、メタボリックシンドロームに1.5倍なりやすいことが報告されています。
幼少期の逆境体験は、成人期のがんや循環器などの発症や、喫煙・薬物利用、肥満、運動不足など多くの不健康な生活習慣と関連することが知られています。