健康寿命延伸のための提言45 提言のエビデンス6心理社会的要因3

国立高度専門医療研究センター6機関(国立がん研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立国際医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センター)が連携して、研究成果として「疾患横断的エビデンスに基づく健康寿命延伸のための提言(第一次)」を公開しています。提言のエビデンスの解説(第3回)を紹介します。
ソーシャルサポート(社会的支援)や社会的孤立など、社会関係に関する状況と死亡の関連を検討した148研究(平均追跡期間:7.5年)のメタ解析で、社会関係を多く保っている群の方が、そうでない群よりも死亡リスクが1.5倍高くなることが報告されています。日本においても、月1回以上グループ活動に参加する男性は、そうでない男性に比較して3年間の追跡期間中に死亡リスクが低下することが報告されています。
欧米の研究では、ソーシャルサポート(社会的支援)が少ないと、心筋梗塞発症・死亡リスクや脳卒中後の身体機能回復が低下するリスクが高くなることが報告されています。日本の高齢者コホート研究において、ソーシャルサポートが少ない群における脳卒中による死亡リスクが、ソーシャルサポートが多い群と比較して1.5倍(男性1.6倍、女性1.3倍)高かったことが報告されています。
また、日本の中高年者を対象に8年間追跡した調査では、社会参加や友人の有無、雇用状況などの情報によって定義した社会的な関わりをより多く持つ場合に、糖尿病を発症しにくかったことが報告されています。
月1回以上グループ活動に参加する男性は、そうでない男性に比べて3年間の追跡期間中に日常生活動作能力の低下が起こりにくいことや、参加する組織の数が多いほど4年間の追跡期間中に要介護認定を受けるリスクが低くなることなどが報告されています。また、日本の高齢者のコホート研究データをもとに、65歳以上の4,304人を対象にした研究では、社会参加などの活動が減少した状態(ソーシャルフレイル)にあたる人の要介護認定を受けるリスクが1.6倍であることが報告されています。
また、認知症や認知機能の低下については、読書やカードゲームなど頭を使う余暇活動をすると認知症発症リスクが低減するという研究や、頭を使う余暇活動に加えて、身体を動かす余暇活動、友人の家を訪問するなどの社会的な活動といったように活動の種類ごとに認知機能の低下との関連を示した研究もあります。