地域の健康対策は竹槍では通用しなくなっている

無謀なことをする人を「竹槍で突っ込む」と表現することがあります。竹槍(たけやり)というのは第二次世界大戦の本土決戦に備えて竹の先端を斜めに切って、槍のように使った訓練をした意味のない行動を指していて、実際に日本人が竹槍で戦うことはありませんでした。ところが今、実際の竹槍を構えているわけではないのですが、それと同じことをして強敵と戦おうとしている人が少なくありません。今の時代の強敵といえば新型コロナウイルス感染、それも根本的な対策が見えてこない変異株の蔓延が思い浮かべられるところですが、今回の話は新型コロナウイルスそのものではなくて、外出自粛戦略によって低下してしまった国民の健康度のことを指しています。
外出自粛が1年で終わることがなく、2年になるかもしれない、それでは済まずに3年になるかもしれないと強い懸念が寄せられる中、運動不足、外出できないことによる歩行不足、自宅にいる時間が長くなることでの食べ過ぎ・飲み過ぎ、健康診断に行かない、病院での治療も遅れる、健康のことを学びたくても講習の機会がない、図書館にも自由に行けない、知人と情報交換もできない、そんなことばかりでストレスが蓄積されていく一方という状態が続いています。
この結果によって単純に太ったということだけなら、自粛が解除されなくても元の状態に戻すことは可能ですが、見た目だけでは判断できない健康上の変化がジワジワと着実に進んでいます。日本人は75年前の終戦後には、いわゆる先進国の中でも平均寿命が短くて、終戦から2年後の1947年(昭和22年)には50歳でした。当時のアメリカは60歳、北欧では70歳に達していたので、先進国でも最下位だったのです。
そこから一気に平均寿命を延ばして、今では2位に下がったものの、1位を誇った時代が長らく続きました。平均寿命が延びると、加齢によって増える病気は多くなっていくものの、世界最高の超高齢社会であっても、まだまだ健康度が最悪という状態ではありません。それだけ日本人は食事、運動、休養などを組み合わせて健康づくりに励んできました。
ところが、コロナ禍で、その健康づくりの機会が減り、運動不足と食べ過ぎ・飲み過ぎの結果が死亡数に現れてくるのは数年先としても、着実に悪い方向に向かっていることは事実です。この事実を竹槍で戦う強敵としているのです。
これまで銃で戦ってきた相手が強くなってしまったら、銃よりも強い武器が必要になってくるのに、これまでと同じ方法で戦おうとしているのが現状です。こうなると銃の威力がないのと同じことになってしまい、それで私たちの武器を竹槍にたとえているのです。
地域の高齢者は、次世代のために元気でいて、健康面でも指導する立場であるべきなのに、このままでは次世代の負担を増やすことにもなりかねません。今すべきことは、もっと健康づくりに効果が出る研究成果(エビデンス)と実践のためのプログラムです。日本メディカルダイエット支援機構は、メディカルダイエットの研究成果と次世代支援を強く意識した三世代(子ども、親、祖父母)での取り組みを推進しています。