大人気なのに人気がない?

同じ漢字なのに読み方も意味も違っているのは異音異議語と言います。どちらの読み方をするのかは周囲の文字を見ればわかるはずですが、そこに気づかず、頓珍漢(とんちんかん)な状況になってしまうこともあります。

“大人気”と書いたら、「だいにんき」と読むことが多いかと思いますが、「おとなげ」とも読みます。前者(だいにんき)は、たいへん評判がよくて、好まれる状態を指しています。後者(おとなげ)のほうは、大人らしい自制や分別を意味しています。

大人気(おとなげ)は、一般には“大人気ない”という使い方をされています。この意味で「大人気ない発言」と書いたのに、これを渡した司会者から「“だいにんき”ない」と読まれてしまって、会場が一瞬シーンとしたことがありました。

大人気(だいにんき)と来れば、その後には“ある”と続くだろうと思っているところに、いきなり“ない”と言われたら、状況が把握できない人が出てくるのは当たり前のことです。

途中で大人気(だいにんき)ではなくて、大人気(おとなげ)の読み間違いであることに気づいた人がいて、ざわつきも起こったので、これを受けて講演の初め(落語で言えば枕話)に、大人気と結びつけた健康の話題から入りました。

私たちの健康分野の話は人気があるのに、これが大人気にならず、その理由を他人のせいにするような大人気(おとなげ)ない行動をしてはいけない、という話です。単なる譬(たと)え話ではなくて、実際にいた経営者の例をあげて(匿名にしましたが)話をしたところ、“他人の不幸は蜜の味”という感覚なのか、もの凄く会場受けしたことを覚えています。

司会者の間違いを講演のネタにしたことに、関係者からは「大人気(おとなげ)ない態度」と言われました。大人気ない行為でも大人気になればよいのか、それとも人気を抑えても大人気のほうを優先させるのか、そこを決める基準になるのは話を聞いてもらえる聴衆者の受け取り方次第だと感じています。
〔日本メディカルダイエット支援機構 理事長:小林正人〕