太っていると骨が丈夫になるのか

太っているとよいことはない、というのが一般的な印象です。そのことに異論はないのですが、すべてがよくないのかというと、そうではありません。太っていることでよいことは少なからずあって、その一番は免疫の向上です。太っていると生き残りやすく、病気に負けにくいといわれます。もう一つは骨の強化です。骨は運動的な刺激を受けることによって、骨密度を高める作用がある増骨細胞の働きが盛んになっていきます。増骨細胞は骨芽細胞とも呼ばれています。
増骨細胞の働きを高めるためには骨に刺激を与える運動や活動が必要となってきますが、できるだけ日常的な刺激が大切です。本当なら、いつでも運動をしているようなことがよいのでしょうが、そうはいかないというのが普通のことです。太っている人の場合には、体重が多くなっている分だけ、骨が受ける刺激が強くなります。そのために太っている人は、増骨細胞の働きが盛んになって、骨密度が高まっていくのです。
確かに、重い身体を支えるためには丈夫な骨が必要で、体重があるほど骨は丈夫になっていきます。今は同じ体重であれば、骨密度も同じような状態なのかというと、そうではありません。もともと太っていた人の場合には幼いときから骨に強い刺激を受けていたことから骨も丈夫になっています。それに対して、途中から急に太った人の場合には、それほど骨に刺激を受けていなかったのに、急に刺激が強くなったので、骨密度が高まるほどにはなっていません。
このようなことが起こるのは骨密度のピークと関係があります。骨密度のピークは20歳前後で、徐々に骨密度が低下していって、40歳を過ぎると大きく低下していきます。20歳前後で骨の刺激が弱くて、骨密度が低かった人は、ピークの時期が過ぎてから骨の刺激が強くなったとしても、それほど骨は丈夫にはなっていかないということです。
ということは、「骨を丈夫にするために太ろう」というようなことを考えても、実際には無駄なことでしかないということです。では、どうすればよいのかということですが、わざわざ太って骨に刺激を与えるという変なことを考える必要はなくて、体重以外に骨に刺激を与えることをすればよいのです。一つの方法は大股で歩いたり、階段の昇り降りをして、足腰に強い刺激を与えることです。もう一つは荷物を背負って歩くことです。荷物の分だけ体重が増えたのと同じになって、その分だけ骨への刺激が強くなります。一番いいのは重めの荷物を背負って、グイグイと勢いよく歩くことです。
もちろん、骨を丈夫にするためにはカルシウムの摂取は必要です。骨はカルシウムだけでは丈夫にすることはできなくて、栄養成分でいえばマグネシウムもビタミンDも必要です。骨はタンパク質が網の目に構成されているところに、カルシウムが取り込まれていくので、ただカルシウムだけを摂ればよいわけではないのです。